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アジアパシフィックオープンゴルフチャンピオンシップ パナソニックオープン 2008
横尾要「僕は自信があるなんて、絶対に言えない」
途中で矢野に気づかれないように、会見場の一番後ろの席にそっと座った。
コーヒーをすすりながら、じっと話しを聞いていた横尾がつい口を出したのは、矢野が谷原について語っているときだった。
「明日は、日本が誇る素晴らしいプレーヤーと、調子が良い僕と2人で大舞台で優勝争いできることが嬉しい」。
その言葉が終るのを待たないうちに、「ねえ東(あずま)、俺は?」。
その声にびっくりした矢野は、そこでようやく横尾の存在に気づいて息をのんだ。
目を見開いて思わず言った。
「もちろん、要さんも・・・。て、なんでそこにいるんですかっ!?」。
リーダーを慌てさせて、笑いを誘った。
言わずもがな、矢野も谷原もいま絶好調の2人。
「どちらも今年1勝をあげているし、僕は今年の成績という点では大きく遅れを取っているから」。
矢野とは5つ、谷原とは6歳年上。
それにもかかわず今は、破竹の勢いの2人に横尾はどこか引け目を感じているようで、翌日の最終日最終組は火花を散らす2人の間に割って入ることにも、遠慮する気持ちがある。
また、自信のほどを隠すことなく会見の場で堂々と打ち明ける2人に羨望の思いもある。
「俺のころは、そんなふうに言うと何を偉そうにと言われた時代だったから。いまどきの若い子たちはそういう傾向にあるんだね。それで結果も出して、ほんとうに羨ましいよ」と、36歳はしみじみと言った。
「俺は自信があるなんて、絶対に言えない」という横尾は会見場で、矢野にもそう伝えたら「要さんは、ネガティブすぎるんです」と一刀両断されたが、「明日は2人の凄さに圧倒されないようにしたい」と、どこまでもそのスタンスは変わらなかった。
この日は前日2日目の残り競技を消化してから、続く第3ラウンドまで約5時間。
いったん、コースから車で5分の宿に戻ってテレビを見ながら時間をつぶしたが、案の定もてあました。
「気持ちの持っていきようが分らなかった」と前半の難易度1位の11番でボギーを打つなど、首位の座こそ明け渡したが、1打差の単独3位。
確かに前を走る若い2人は勢いがあるが、「経験は僕のほうが長い。そこらへんで頑張って、あとはどんなゴルフでもいい。きれいなゴルフでなくてもいいから、ひとつでも少なく上がるということしか考えない。がむしゃらに、くっついて行く」。
プライドもかなぐり捨てる構えだ。