Tournament article

三菱ダイヤモンドカップゴルフ 2009

石川遼「神様からもらった貯金を大事に」

どこまでも前向きな17歳に、無難に逃げるという選択肢はない。失敗も、恐れない。誰もが一縷の望みもない、と思うような場面でも、そこに1%の可能性を見付けたならば、それに賭けてみたいのだ。

そして、そうと決めたら「最悪の結果は考えないんです」と、石川はいう。

前方を阻まれた前半の12番は、果敢に松の木超えにトライ。
15番は、グリーン手前のバンカーから木の合間を抜いて、グリーンに乗せた。

この2つの成功体験が、石川の挑戦欲をますます掻き立てたのが、後半の3番パー4だった。

左の林に打ち込んだ第2打は、完全に八方ふさがりの状況かと思われた。
生い茂る松林からひとまず横に出すにしてもフェアウェーまでの距離が遠く、深いラフに潜り込む恐れもあった。

万事休すか・・・。

しかし、高校生プロの輝く瞳はわずかな希望を見逃さなかった。
ボールから約40ヤード先、地上からは約15メートルの高さに出来た隙間は縦1.5メートルと、横幅はわずかに50センチしかなかったが、底抜けのプラス思考は「横はダメだけど、縦は1.5メートルくらいのブレなら大丈夫」と読んだ。

しかもピンまでは110ヤード。
「その距離ならばコントロール出来る」と直感した石川はアプローチウェッジをやや短めに握り、フェースをややかぶせ気味に構えて、上から叩きつけるように振り抜いた。

「狙うにしろ横に出すにしろ、木に当ててもういちど林から3打目というのが一番いけないことだと。なんとしても、あの隙間を通すんだという気持ちで打った。」。

果たして、ボールはわずかな空間をみごとすり抜けたどころか、その先のグリーンでワンバウンドして、なんとカップに吸い込まれた。

イーグルと、計算した以上の結果に石川は「うまくいかなかったら、ダブルボギーでも収まらない状況になっていたと思う。自分を客観的に見て怖い」と、言った。

「本当なら曲げた罰として、林からなんとか出してパーセーブ、というのがセオリーかもしれない。だけど、試合になるとコントロール出来ないんです。狙ってしまう」と、苦笑した。

「僕が狙うと決めたときは、頭と体が一致したとき。クラブの先から足の先、頭のてっぺんまで一致しないといけない。本当に出来るかな、という中途半端な気持ちがいちばんいけないんです」。
そうひといきに言ってから、「でも、これも全部、成功したから言えるんですけど」と、照れくさそうに笑み崩れた。

15位タイスタートは、当初「1日4バーディ4ボギー」と話していた大洗での目標を2打も上回ったが、「これは練習の成果じゃない」と冷静だ。

「今日は本当に素晴らしいスコアで上がれましたけど、これはイーグルの分の2打どころではなくて、トータルすると、18ホールで5打は得をしている」と、謙虚に言った。

「ラッキーもいっぱいあって。せっかくこうして神様からもらった貯金ですが、ここは1ホールで簡単に貯金を吐きだしてしまいやすいコース。大事にしていきたい。明日からも、気の抜けない戦いです」。
本人には思いがけない好スタートに、気持ちを引き締めなおした。

関連記事