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マイナビABCチャンピオンシップ 2009

石川遼は6打差3位に

本人は「そうでしたっけ?」と、照れ笑いでトボけたが、ホールアウトして、丘の上にあるクラブハウス内のスコア提出場に向かう足取りは、いつになく猛スピードだった。

決勝ラウンドのペアリングは、もっともスコアが良い選手ほど、後ろの組になる。
さらにタイの場合は先にスコアカードを提出したものが、あとになる。

この日は16番あたりから、すでに石川は「最終日最終組で回るにはどうしたらいいか」と、考え続けており、そのためにひとつでもスコアを縮めようと、懸命だった。

最終18番パー5を迎えた時点で同スコアの通算6アンダーは、ひとつ後ろの最終組の星野英正と、同組の金亨成(キムヒョンソン)と、3人並んで3位タイ。

ぜひ、イーグルで抜け出したい。
前日2日目は、340ヤード超のビッグドライブを放ち、8番アイアンで楽々狙えた第2打も、この日は強いアゲンストの風に、池越えのショットはピンまで235ヤード。

しかし恐れを知らぬ18歳は、躊躇なくスプーンを握り、ピン4メートルを捉えた。
このイーグルパットこそ外したが、いざコースを離れても、目標達成のためなら出来る限りの力を尽くす。

金と並んで通算7アンダーに、残されたチャンスは誰よりも早くスコアカードを出すことだったが、なぜ石川がここまで最終組にこだわるのか。

選手には二通りある。
優勝争いは、最終組のひとつ前で気楽にやりたいと思うタイプと、もっとも注目が集まる最終組で、常にリーダーの動向を直接この目で伺いながらやりたいタイプだ。

「僕はあきらかに後者のほう。トップの人が、そばにいたほうがやる気が出るし、優勝者はやっぱり最終組から生まれる可能性が高いはず」というのが石川の考えだ。

首位の鈴木亨も「遼くんは、そういう子」と想像していたとおりだったが、この日3日目に同じ組で回った甲斐慎太郎も、そんな石川の気持ちを察していたのだろう。

大ギャラリーでごった返す道すがら、「先に行きなよ」と、石川に道を譲った。
周囲のアシストもあって、アテスト場に一番乗りした石川は、スコアチェックもぬかりなく、誰よりも早くカードを提出して、無事お目当ての“座席”をゲットした。

この日3日目に苦しんだショートアイアンの精度や距離感も、ホールアウト後に直行した練習場で、修正出来た。
日々「ジャストタッチ」を心がけてきたABC名物の高速グリーンも、この日はカップに届かないシーンが多かったが、それも想定内だった。
最終日に、よりいっそうスピードを増すことを予想して、この日は「10センチ、…20センチショートでもいいかなと思って打っていたから」と、懸念事項にすら入らない。
「3日間で、すべての要素が良くなってきて。これまで順調すぎるくらい」と、ホスト試合で自身初の大会連覇にむけて、この上ない舞台設定が整った。

ただひとつの大きな壁は、首位との6打差か。
通算13アンダーの鈴木を前に、「明日は14(アンダー)は出さないと勝てない。ひとつでも、多くバーディを取る。もうひとつ大きな運と奇跡があれば優勝できる」と、諦めない。

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