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三井住友VISA太平洋マスターズ 2009
石川遼が賞金ランク1位に
この日、自身23ホール目となる最終18番は、517ヤードのパー5で日本一の山に向かって振り抜いた渾身のティショット。
さらに、残り155ヤードの第2打で握ったのはなんと、ピッチングウェッジだ。
普段は130ヤード前後で選択するクラブ。
専属キャディの加藤大幸さんは、9番アイアンをすすめていた。
でも、石川には2年前に来日したアダム・スコットら、世界の飛ばし屋が同じような状況で短いクラブで狙ったことを覚えていて、どうしても同じようにやってみたくなった。
「この距離ではさすがに不安だったけど。この風は、もう来年は吹かないかもしれないから」と石川らしいクラブ選択で、ピン5メートルにみごとに2オン。
いつになく、カップに嫌われた4日間はこのイーグルパットも「あれを外すとは」と、本人も思わず苦笑したが、楽々バーディで締めくくり、最終日としては今季最多の1万8000人を超える大ギャラリーの前で最後にきっちりと見せ場を作った。
「1年間待ち遠しかった」という御殿場での今季5勝目には、3打足りなかった。
それでも週末の悪天候に、早朝3時から作業に追われるコース管理のみなさんのご尽力に触れて、ますます優勝への思いを強くしていった。
日々試行錯誤を重ね、最後まで頂点だけを見据えていた。
いつもパットを打つ前にする2回の素振り。だが「構えて、カップを見て…というのを繰り返しているうちに、ちょっとずつラインが違って見えてきてしまう」。
そのせいで、打ち切れていないのではないかと考えた石川は、最終ラウンドでは1番ホール以外は一度も素振りをしなかった。
「最初の第1感を大切に打った」。
結局、それもあまり効果はなかったというが、「そういう積み重ねのおかげで、こうして上位にいられる」。
今年も御殿場の高速グリーンに「思い通りにやらせてもらえなかった。またこれから1年間修業をして、来年こそ優勝したい」と、大会への思いを新たにした4位タイフィニッシュ。
同時に「こうして最終的に、上位で終わることが賞金王につながっていく」と、確信した収穫の1週間。
賞金660万円を加え、賞金ランキングは池田を抜いて、10月の日本オープン以来となる1位の座を再び奪い返した。
「プレー中は意識していないけど、プレーが終わったときはランキング上位の選手の順位をみたりする。頭の中では、徐々に賞金王を目指していこうという気持ちになりつつある」。
この日は、ショット後に言葉にならない大声を発するシーンも幾度かあり「無意識に出た。自分にイラっとして、どこに怒りをぶつければいいのか。でもぶつけたところで、自分が悪い。今度から、自分を殴るようにします」と照れ笑いで反省したが、18歳にも戦う男の闘争心が芽生えつつある。
尾崎将司が1973年に達成した26歳を更新する史上最年少の賞金王とともに、ジャンボ、伊澤利光に次いで史上3人目の2億円超えまであと約4038万円。
石川も、最終戦の日本シリーズJTカップまでに「狙える位置にいたら考えたい」と、偉業達成も射程に入れた。
今季は、残り3戦。「賞金王争いも池田さんと2人に絞られたわけではない。まずは自分のプレーをしっかりしていきたい」。
富士山のふもとから、再びくっきりと見えてきた日本一への一本道。石川が再び大きな一歩を踏み出した。