Tournament article
長嶋茂雄 INVITATIONAL セガサミーカップゴルフトーナメント 2009
梶川剛奨(かじかわたけし)が2位タイ浮上
チャレンジトーナメントでは3勝の経験があるが、ツアーではまだシード権すら獲得したことがなく、2006年のサン・クロレラ クラシックの11位が最高で、もちろん最終日最終組も初めての経験だ。
「明日は自分でもどうなることやら・・・全然分からない」と、苦笑いで首を振る。
99%の進学率を誇り、東大合格者も出るという千葉県の進学校、東葛飾高校出身。
高校受験はそれなりに苦労したが本人は、はなから大学に進むつもりはなかった。
12歳から父親の手ほどきで始めたゴルフにすっかりハマっていたこともあり、「自分は普通の職業では向かない。腕1本で行きたい」と周囲の反対を押し切って、プロゴルファーを目指した。
24歳の1995年に晴れてプロ転向を果たしたが、そのあとの道のりは険しかった。一銭も稼げない年が続き、ツアーの獲得賞金はこの14年間で1077万2304円。
まして2007年には頸椎ヘルニアを患い、約半年間もクラブが握れなかった。
完治には至っていないが、現在は患部に超スピードで振動を与えて痛みをやわらげる「バイタルリアクト」なる治療に通院することで、どうにか戦えてはいるが「こんなに分の悪い商売はない」と、苦笑する。
「景気も悪いし、他の仕事を探そうかと本気で思う」と口では言いながら、しかしそこに悲壮感はない。
2年の交際を経て、今年2月に静さんと結婚。
それでは、なおさら家族を養うのは大変でしょうと、無粋な質問をぶつける報道陣にも「全然つらくない」と、破顔一笑した。
現在、サポート契約を結んでいるのは5社。
知人のつてを頼った会社もあるが、ほとんどが自ら“営業”してきたものというから、ひょっとしたら本人が敬遠したサラリーマン稼業も、意外とうまくこなせるのかもしれない。
6月のUBS日本ゴルフツアー選手権 宍戸ヒルズでは、やはりQT組の五十嵐雄二がシード権もない状況でいきなり優勝をあげたが、今週もまたその再現となるかもしれない。
周囲の手厚いサポートを受けながら、夢を追い続ける37歳は「そうなれば、何よりの恩返しになる」と目尻を下げる。
しかし、逸る気持ちを自らたしなめ、「数字とか、順位とかにこだわると消極的になって、ろくなことがない。明日もこの3日間、やってきたことをやり通す。決めたショットを決めたところに打つ。それだけです」。
どうかすると20代にも見える童顔が最後に一瞬、引き締まった。