翌週には全米オープンが控えるが、強行軍を承知で矢野はこのプロ日本一決定戦にやってきた。
出場が決定してすぐに、やはり権利のある片山晋呉は言った。

「僕も、前週に日本でやってすぐに渡米、というのをやったことがあったけれど。それではとても間に合わないから」。
今年の会場はベスページブラック。
史上最高といってもいいモンスターコースで、下見不足と時差ボケを抱えたままでは、とても戦えるものではない。

だから、昨年覇者という立場で大変心苦しいが、今大会を欠場するつもりであることを聞いて、矢野も大いに迷ったという。

しかし、「僕にはまだ未知の世界だから結局、判断がつかなかった」。
それに、今年は開幕ダッシュに乗れず、まだ日本で満足のいく結果を残せていない。
世界最高峰の舞台は、何かしらの手応えをつかんでから行きたい。
その思いから、今大会のエントリーを決めた。
「時差ボケも、どうにかなると信じてやろう、と」。
その甲斐あってか、ここにきてゴルフは上り調子だ。

「練習場で打っている感触は申し分ない」。
あとは、本番で出来るかどうか。
「やれそうな雰囲気はかなりある」と、自信がのぞく。

渡米前の大事な１戦。「今週は、結果を出して行くつもりなので見ていてください」。
久しぶりに、強気な言葉も飛び出した。

• 矢野 東
• 片山 晋呉