Tournament article
東建ホームメイトカップ 2010
シード元年の梶川剛奨(かじかわたけし)が好発進
「グリーンが硬くて止まらないので、落としどころに気をつけました。たとえば受けグリーンなら、奧は絶対にダメとか。そのへんは考えましたけど、今日は運も良かった」と、タフな初日を謙虚に振り返った。
昨年10月のコカ・コーラ東海クラシックで、三つ巴の優勝争い。石川遼と池田勇太に挟まれて自己最高の2位につけ、初シードをもぎとった。
しかし、シード元年で迎える2010年に向けて、特に気負いはなかった。
「もう、何か新しいことをやれる年齢でもないから」。
このオフは、例年どおり数週間の海外合宿と、あとはもっぱら地元・千葉県で、ショットの精度を上げる練習にいそしんだ。
「初戦だからといって、特に思いもないです」。
普段着のまま迎えた開幕戦が、吉と出た。
悪コンディション下でボギーは3番のひとつでとどめて6位タイ。
「初優勝・・・って、そりゃあしたいですけど、まだ初日。勝つには、運とかいろんな条件がたまたま重なるっていうのもあるし」とあくまでも無欲を強調したが、この東建ホームメイトカップは思い入れの強いトーナメントでもある。
妻と初めて出会ったのが、2007年のこの大会。
当時、開催コースのここ東建多度カントリークラブ・名古屋につとめていた静さんとのなれそめは微笑ましい。
実は、静さんと一緒にフロントの受付業務をしていた別の社員さんが、そのとき梶川のバッグを担いでいたキャディさんに恋をした。
「お願い、一緒に来て!」と頼まれキャディさんと、梶川を交えた食事に、静さんも同席した。
それがきっかけで交際が始まり、2年後の昨年2月に結婚。
そして、今ではお腹に赤ちゃんもいる。
今年の七夕が予定日だという。
「考えたら出会ってからまだ3年目。人生って、分からないもんですねえ」とのんびりと笑った静さんだが、それはむしろ夫のセリフだろう。
「“あげまん”とかあんまり言わんでください。すぐに調子に乗りますから」と、わざとワルぶった梶川だがまさに、静さんに出会ってから運命が180度転換したのは間違いない。
静さんは、「いえいえ、たまたまです。この人の力です」と謙虚に手を振ったが、結婚した途端に初シード入りを果たすなど、トントン拍子に来ている。
他のツアーメンバーたちもよく言うことだが「赤ちゃんが出来るとツキが来るって・・・・・・。僕もそうなればいいけれど!」。
そう言って、妻のお腹を嬉しそうに撫でる表情は、充実感に満ちている。
「そんなうまい具合には行くわけないですよね」と、本人はカラカラと笑ったが、思い出が詰まったこの地で、妻とまだ見ぬ子に贈りたいものはひとつしかない。