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三井住友VISA太平洋マスターズ 2009
今野康晴が昨年のリベンジ
4年ぶりのツアー通算7勝目は、家族の存在なしには語れない。
「今度こそ、プレーオフにはしないでよ」と、崇乃子さんに釘を刺されたのは、前日3日目の残り8ホールを終えて3打差の首位を守り、いよいよ最終ラウンドのスタートを待つ間。
昨年のこの大会は、最終ホールで片山晋呉に追いつかれ、プレーオフの末に敗退。さらにそのあともプレーオフで6戦全敗という前代未聞の不名誉な記録を更新中で、本人だってもう懲り懲りだった。
しかし、火曜日には発熱。サスペンデッドとなった3日目には腰を痛め、最終日に計26ホールの長丁場には、途中歩くのもつらいほど。体調不良にショットにも力が入らず、6番で池に入れてダブルボギー。一時は久保谷に1打差まで詰め寄られ「また今年もか」と悪い予感がよぎったが、「最後は去年の経験が生きたと思う」。
たとえば昨年は、ピンを狙って奧に落とした15番。
あとで片山が、「あそこで狙っちゃダメなんだ」と、話していたと聞いた。
また、昨夏より教えを乞うジャンボ尾崎にも「あそこは右で良かった。時には逃げたり、安全なほうから打つことも大事だ」と諭されたのを思い出し、特に終盤はそれを肝に銘じて危なげなく逃げ切った。
勝利を確信したのは17番だ。昨年ボギーを打って、片山に付けいる隙を与えたホールでのパーセーブにロープの外で見守る崇乃子さんもまた、「もう大丈夫」と安堵の吐息を吐いていた。
息もピッタリの夫婦は今月の11日が、10年目の結婚記念日。だがオフの月曜に妻にプレゼントを買いに出かけた夫は、首都高で側壁にぶつかる自損事故。
幸い怪我はなかったが、手ぶらで帰ってきたどころか修理代に600万円もかかると聞いてしょげていた。
そんな夫に妻が言った。
「プレゼントはいいから優勝してよ」。
さらにこの週、会場入りするなり18番グリーンサイドに構える副賞に、夫婦揃って「これしかない!」。
高級外車のBMWは、真っ白な「ニュー 740i」。
まさに2人が欲しかった理想の新車に「今年こそ」の思いをますます強くした。
今季は5月に首と肘を痛め、約3ヶ月を棒に振った。
「子供3人も抱えてどうすんの!」と冗談交じりになじられながら、妻の理解でしばらく“主夫生活”に専念したことも、幸いした。
子供相手に過ごすうち、「ゴルフばかりで煮詰まっていた頭が整理されて、物事をシンプルに考えられるようになった」という。
そして、8月に特別保障制度の適用を受けて復帰するなり、プレーオフの末の2度の2位を含む4度のトップ10入りで、上昇ムードの矢先のV。
「こんなに体が悪い中で、優勝出来るなんて」と、喜んだがそれも崇乃子さんがあってこそ。
ときに辛辣な妻の叱咤激励も、「頑張らなくちゃという気持ちになれるから」と、のんびり屋の夫にはちょうどいい。
そんな妻のゲキに応えるリベンジに、「僕以上に喜んでくれていると思う」。むしろ、すすんで尻に敷かれる夫は、何よりそのことが嬉しくてたまらないようだった。