記事

ゴルフ日本シリーズJTカップ 2008

賞金王が今季最終戦

2年ぶり5度目の賞金王に返り咲いた今年は、特に忘れられない年になった。偉業達成へのカウントダウンが始まったのは、5月の日本プロ。

小学生のころからつけているゴルフ日記に「35歳で25勝」と書き込んだのは今から約10年前。24歳のころだ。
その達成にあと1勝と迫り、負けるたびに報道陣に追いかけられて、「またダメでしたね、と言われるのが相当つらかった」とあとで打ち明けたが産みの苦しみを味わった分だけ、喜びもまた格別だった。まして区切りの勝ち星は、本人が人一倍こだわる日本一の舞台だった。

10月の日本オープンで、晴れて永久シード入りを果たし、それまでの悔しさもこの日のためにあったのだとしみじみと語ったものだ。

そのあとも勢いはとどまるところを知らず、11月の三井住友VISA太平洋マスターズで有言実行の大会初制覇を成し遂げた。
夏以降、破竹の勢いを見せた矢野東の猛追も「そう簡単に獲れるもんじゃない。何度も獲ってきたからこそそれが分るんです」と軽くいなし、王座奪還を不動のものとした。

このツアー最終戦「ゴルフ日本シリーズJTカップ」では、史上4人目となる同一年の日本タイトル3勝がかかっていた。
本人も「今欲しいものはと聞かれたら、このタイトルしかない。そのために99%の準備をしてきた」と言ってはばからなかったが、実現が難しくなったこの日最終日もスタートティで、満員のギャラリーにいくつかのボールと、目も覚める鮮やかなオレンジのテンガロンハットをプレゼント。

強風が吹き荒れた2日目をのぞいて初日から毎日、楽しいパフォーマンスで盛り上げた。
前日3日目に1番で片山が投げ入れたピンクのハットをキャッチした平野未知さん(28歳、会社員)は実は、初めてのトーナメント観戦で人気の石川遼を見に来た。

しかし、賞金王からの思いがけないプレゼントに大喜びで「今日はこれをかぶって片山さんを応援します!」。
女性ファンのハートもがっちりつかんだ。

最終日は全員出席の閉会セレモニーのあと、選手全員の手で宙を舞った。
仲間からの祝福を受けて笑顔が弾けた。

谷口徹に王座を奪われた昨年大会は「悔しくて、悔しくて仕方なかった」。
その日から、この日のことだけを思い描いてこれまで以上の努力を自らに強いた。
「一度奪われたものを奪い返すのは難しいこと。それを成し遂げることが出来て本当に良かった」。

そう言ったそばから「でも、ゴルフはしばらくいいかな。しばらくは見たくもない…」と苦笑いを浮かべたが、誰よりもゴルフを愛する男は来年もまた、新たな夢実現のためにひた走るのだろう。


関連記事