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ブレンダン・ジョーンズバーディ率賞受賞

バーディ率で、今年ランク1位を獲得した。185センチの長身を、タキシードでバシっと決めて臨んだ12月3日の「2007年度ジャパンゴルフツアー表彰式」。
社団法人 日本ゴルフツアー会長の島田幸作よりトロフィと、サントリー株式会社より副賞のサントリービール『ザ・プレミアムモルツ1年分』を満面笑顔で受け取ったジョーンズに、鋭い視線を向けている選手がいた。

今年、賞金ランク9位で初シード入りを果たした小田孔明だ。
最終戦の「ゴルフ日本シリーズJTカップ」の3日目に1イーグル5バーディを奪ってほぼ確信していた。
「もう、僕で決まりでしょう?」。
そのとき、バーディ率で1位につけていた小田は、そのまま自分が逃げ切れると信じ、すでにこの表彰式用に、タキシードのレンタル予約まで済ませていたのだ。

しかし、その最終日に事態は一変。
ジョーンズがコースレコード新の61をマークして、逆転の今季3勝目は当時2位につけていたバーディ率ランキングでも大逆転。
1日に10個ものバーディを取られては、手の施しようもない。
いつも陽気なオージーは、ひとたび勢いに乗ったらもう誰も止められない。
土壇場の大爆発にワナワナと拳を握りつつ、小田も素直に負けを認めるしかなかった。
壇上の“主役”をまぶしそうに見上げつつ、「来年こそ俺が取る」と、心に誓った。

今季一番の成長株をも本気にさせたジョーンズが、日本ツアーで初シード入りを果たしたのは2001年。2005年には、ネーションワイドツアーの資格で米ツアーに昇格したが、そこで改めて思い知ったのは「日本ツアーの素晴らしさだった」と振り返る。

「確かにアメリカは世界最高峰の舞台かもしれない。だけど、人々の優しさやスタッフのケア・・・そして何より交通の便の良さは日本のほうがずっと上。宅急便という素晴らしいシステムも捨てがたい。だって日本なら、翌日には次の会場にバッグが到着してるんだ。それって最高に楽チンだよね!」。

そんなわけで、今年は日本に腰を落ち着けると決めるや、4月のつるやオープンで大会3勝目。
だがそのあとしばらく低迷が続いていた。
本格復帰元年は「日本と名のつくタイトルを取る」と張り切っていたものの空回り。
思うようなゴルフができず、なかばふて腐れて帰郷したのがシーズンもなかばを過ぎた10月だった。
愚痴をぶつけるジョーンズに、コーチのアレックス・マーサさんが言ったのだ。

「君には可愛い奥さんがいる。そして7月には待ちに待った赤ちゃんも。ボギーを打ったって、試合に負けたって、君の人生は素晴らしい。そうじゃない?」。

これで一気に吹っ切れた。
そのあと、さらに2勝をあげて賞金ランクは自己最高の3位でシーズンをフィニッシュ。
「タニグチさん、カタヤマさんは世界でも通用するトッププレーヤー。その次につけることができて、今年は本当に最高の1年になりました!」と、大喜びだ。

しかし、来年は2人を抜くとは断言しなかった。
「そのためには、僕にはもっともっと練習が必要ですから」と真摯に答えつつ、「でも僕は、なぜか練習しないほうが調子が良いと来ているからなあ・・・」と、わざと悩ましげにそう言って笑った。

そして、ツアーきっての愛妻家はまさに内助の功の妻・アデレさんにもぬかりなく、帰国後すぐにベストサポート賞の記念品を手渡して、今年1年の感謝の気持ちをあらわすことも忘れなかった。

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