記事

ゴルフ日本シリーズJTカップ 2008

石川遼も最終戦

この1年間、常に大ギャラリーを引き連れてのラウンドも、もはやそれがプレッシャーになることはなくなったが…
今年1月5日に史上最年少のプロ転向を表明した際には、さまざまな意見が飛んだ。その将来性を高く評価していたからこそ、迎え入れる選手の中にさえ「早すぎるのではないか…」との懸念の声もあったが、そんな雑音が消えたのはいつのころからだったろう。

いきなり5位タイにつけた開幕戦でも、まだ周囲は半信半疑だった。
そのあと4試合連続の予選落ちに、再び不安の声は強まった。

しかし7月の「長嶋茂雄 INVITATIONAL セガサミーカップ」で3位タイ。
さらに、10月の日本オープンで永久シードを達成した片山晋呉につぐ単独2位。

このころにはもはや、異論を唱える人はほとんどいなかっただろう。日本最高峰の舞台で「集中力の限界」まで挑戦したことで、こだわりのドライバーはますます精度を増して、本人も「自信がついた」というように、そのあと破竹の成長ぶりは言わずもがなだ。

10月のマイナビABCチャンピオンシップでプロとしてのツアー初優勝を飾ると、ダンロップフェニックスで単独2位。
史上最年少の獲得賞金1億円越えも、間違いないものとした。

そしていよいよ迎えたこのツアー最終戦は5位でフィニッシュ。
賞金ランクも5位につけ、今年のツアー活性化にもっとも貢献した17歳は最終日に全員参加の閉会セレモニーのあと、並み居る先輩プロたちからねぎらいと感謝の胴上げをされてもなお、どこか浮かない顔をしてこう言うのだ。

「まだまだ終わりたくない。もう1回今日をやりたい」。

1打差の3位タイからスタートした最終日は朝の練習場で「4日間で一番良い状態」。絶好調のまま迎えたはずだった。
しかし、4番で1メートルのパーパットを外してから、いきなり暗雲垂れ込めた。
パットの不振にショットも乱れ、後半はピンチをどうにかしのぐという展開に。

それでも随所に見せ場を作り、「16番に来るまで優勝は諦めてなかったです」とは言うものの残念ながら、同組でトップをひた走るジーブ・ミルカ・シンを最後まで追いかけていけるほどの内容ではなかった。

「納得のいくショットが少なかったので…」と、不満げに「言いたくはないですけど、今日は4日間で一番悪かったです」と、吐きだした。

この日は過去10年間で、最終日としては大会最多の1万4051人のギャラリーを記録。
「これだけたくさんの方に見られるスポーツ選手はそれほど多くない。そういう場に立っていられた
のは幸せでした」とは言いながらも、大きな悔いが残る。

悔しいのはスコアを伸ばせなかったことでも、優勝できなかったことでもなく、「それをやるために必要なゴルフが出来なかったこと」と、石川はいう。

いつか立つ世界の舞台を夢見て、結果も成績も度外視して、誰よりも遠く正確に。
そんなスイングの確立を目指して取り組んできた今シーズンの、よりによって最後の1日にこれまでやってきたことが、実践出来なかったことが悔しいのだ。

トッププレーヤーたちがこの驚異の17歳を同じプロとして認めた何よりの理由は、今年残した結果のすべてが決してまぐれや奇跡ではなく、本人のゴルフに対するどん欲さと、たゆまぬ努力と鍛錬によって、裏打ちされたものだと分っているからだ。

「まだ終りたくない。やっぱり、もう1回今日をやらして欲しい」と、今年最後の記者会見で繰り返した石川の来シーズンが楽しみだ。
「上手くなくなろう、上手くなろうと、向上を目指して毎週やってきたから時間が過ぎるのが凄く早かったですね」と、怒濤の1年をそんな言葉で振り返り「ツアーは終っちゃいましたけど、僕のゴルフはまだ終っていない。今日からまた毎日練習です」と言った17歳はきっと、2009年の開幕戦でさらにパワーアップした姿を見せてくれるはずだ。

  • それでもこの日は最終日は珍しくうなだれる場面も…
  • 最終日、本人には不本意な結果にやや厳しい表情で、ギャラリーの歓声に応えた
  • 全員出席の閉会セレモニーではようやくいつもの笑みもこぼれ出て…
  • 出場選手全員の手で宙を舞い「僕なんか何もしていないのに…」と謙遜しつつ「みなさん力のある方ばっかりで…。今までの胴上げで一番高かった!」と無邪気な声…!!

関連記事