記事
日本プロゴルフ選手権大会 日清カップヌードル杯 2011
松村道央は「谷口さんの分も頑張る」
ティショットを右に曲げ、第2打は木と木の間わずか1メートルを打ち抜くリカバリー。
あとでキャディの宮崎晃一さんに、打ち明けられた。「本当は、あのとき止めようかと思ったんです」。
「もし止められていても、僕は打ちました」と、松村は即座に言った。
「トリでも、ダボでもいいから、僕は前に打っていく」。
たとえば、安全に横に出して、結局ダブルボギーに終わるのと、チャレンジしてトリプルボギーとどちらがいいか。後悔しないのは、どちらか。
天秤にかけたら、答えはひとつしかない。「そういう性格なんです」。
11番で、ティショットが木に引っかかり、アンプレヤブルのボギーにも、気持ちが萎えることもない。
むしろ、「ボールがあって良かった、得をした。明日を含めてまだ30ホールも残っているし」と、どこまでも前向きに次の12番でしっかりと取り返した。6番アイアンで、右3メートルにつけたのが、「ターニングポイントになった」。
優勝争いに踏みとどまった。
冷静かつ攻撃的で、そして前向き。意外と、師匠譲りかも知れない。
もっとも、この日の谷口徹の棄権は、ホールアウトした後で知った。スタートしたものの、1番ホールを終えてすぐに帰ってしまったと聞かされた。
「谷口さんが、腰が痛いなんて言うのは初めて聞いた」と、決勝ラウンドでのリタイアに、弟子も驚きを隠せない。
谷口には連覇がかかった今大会。
そういえば、月曜日の練習ラウンドから気合いが入っていた。「ドライバーも相当振っていた。練習しすぎたんじゃないか・・・」。
そういえば、この日は朝から珍しく、口数も少なかった。
「朝の風呂場は必ず僕のそばで、4、5分は喋っていくのに」。
いつになく無口な師匠に「集中モードなのかな」と、軽く考えていたが、それほど症状は深刻だったのだ。
月曜日に「アイアンショットで体が回りすぎている。コンパクトに振るように」とアドバイスをくれた恩人がいつも言うことは「3年ぐらい、続けて勝たんと。お前はまだまだ」。昨年は、初優勝から年間2勝をあげた弟子を、そう言って励ましてくれた師匠の代わりに最終日は俺がやる。
「谷口さんの次に、今年自分が勝てれば最高の形。明日は、谷口さんの分まで頑張ります」。最高の形で日頃の恩を返す。