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ダイヤモンドカップゴルフ 2010

金庚泰(キム キョンテ)が日本初Vに王手

前半こそ伸び悩んだが、特に大きなミスがあったわけでもない。ピンチらしいピンチといえば、折り返しの10番くらい。右の木の後ろに打ち込んだ第2打を、今度は左のラフに入れ、第3打は大きくフライヤーして奧のバンカー。
アプローチも寄せきれなかったが、4メートルを決めて、どうにかボギーで収めることが出来た。「ダブルボギーの"チャンス"も逃れることが出来た」と胸をなで下ろし、そのあとはイーブンパーで淡々とホールを重ねていた金が、ふいに牙を剥いたのは14番だ。

うっそうとした松林の向こうに母国韓国から応援に駆け付けた父の基昌(キーチャン)さんの顔が見え隠れした。
「良いところを見せたい」。元プロゴルファーで師匠でもある父親の存在が、何よりの発奮材料となった。
そのあと怒濤の4連続バーディで、下位を一気に突き放した。
2位と6打差に最終日のプランを語った。

ここ狭山ゴルフ・クラブは前半にパー5が3つある。「出来たら3つですべてバーディを獲って、2アンダーで折り返せたら、チャンスがある」。
日本ツアー初Vにむけて、静かにプランを練っている。

韓国のツアーを含めて今週で7連戦。
行ったり来たりのスケジュールは正直、骨が折れるがこんなときこそ父の教えを忠実に守る。

怪我で現役を退くしかなかった基昌さんは、苦い経験を元に、息子には幼いころから1日300球を限度に「絶対に、それ以上、ボールを打つな」と、教えてきた。
自らを教訓に「練習しすぎは選手生命を縮めるから」と、息子に再三言ってきた。

ゴルフが面白くなってきたころは、その縛りが面白くなかったこともある。
だが「300球しか打てない」と思うと、1球1球を大事に打つから、かえって実の濃い練習が出来るというメリットがあった。
それが、現在の鬼のような強さの一端を担ったと言ってもいいだろう。

もう5月だというのにしんみりと冷え込んだ今日のような日こそ、父の教えが生きる。
「明日に備えて、今日はゆっくり休みます」。
リーダーは、ホールアウトするなり早々にコースを後にした。

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