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ダイヤモンドカップゴルフ 2010

武藤俊憲が「1年中、魔法にかかっていたい」

前半のアウトコースでスコアが動かなかったのは、1ホールだけ。8番でようやく(?)パーを拾って、かえって人心地ついた。
専属キャディの小田亨さんと「やっと来たね」と苦笑いで頷き合った。
そして結局1日8アンダーの64には「全然、絶好調なんかじゃなくて。むしろ具合が悪くなりました」。

この日は、「まったく僕らしくないゴルフ」。
昨年まで2年連続でトータルドライビング1位は、飛んで曲がらないショットでスコアを作るスタイル。
その代わりといってはなんだがこれまでに谷口徹にも散々言われてきたように、パッティングが大の苦手だ。だからこそ、切れ味鋭いショットで近くにつけて、チャンスをモノにしてきた。

しかし、初日はまったく逆のパターンだった。
3番や11番、13番や16番は7メートルのバーディチャンスが決まった。
4番は、右から13メートルをねじ込んだ。
5番は10メートル。

「今日はショットが左にしか行かずにごまかしごまかし。フェアウェーから打ってるのに、やっとグリーンの端とか。ピタピタ感はまったくなしで。僕としては、凄いストレス」。

しかし、その分、長い長いチャンスが面白いように入ってしまう。
しかし、その分、15番や17番で、2メートルの絶好のチャンスを外したり・・・。「短いのが入らないから、なんだかよく分からなくなってしまって」と、単独首位にもどこか苦しげ。

いや、その要因は本人も分かっているのだ。
今週、火曜日にテーラーメイド社の販促活動の一環で、デイブ・ストックトンが来日。
このダイヤモンドカップの会場で主に同社の所属プロを集めて、即席のレッスン会が開かれた。
米ツアー10勝、メジャー2勝のシニアプロは、フィル・ミケルソンらトッププロのパッティングコーチとしても、知る人ぞ知る選手である。武藤も例に漏れず、「魔法にかかった」。

その内容は、「国家機密」と頑として、口は割らなかったが彼から受けたアドバイスで今まで悩んできたことが、バカらしくなってしまったほど。
言われたとおりにパッティングしてみたら、面白いようにカップインするように。

「お前は嬉しくないのか?」とストックトンは言った。
「嬉しいけれど・・・」と武藤は答えた。
「じゃあ、笑えよ」と促されたが、「僕は訳が分からないからただポカン、とするばかりで。どうしてそれだけのことで入ってしまうのか。よく分からない話で」。
おまけに、「お前にはこれが合うぞ」と渡されたパターも相性ピッタリで、いざ本戦ではいきなりこの大量スコアだ。

「短いパットは、単に僕のラインの読み間違い。でも長いのは、完全に思ったラインに思ったスピードで打てていて。なぜか入ってしまったという感じ」と、どこか陶然と、「ああ・・・ずっとこのセリフを言ってみたいと思ってた」と、32歳がはにかんだ。
パット巧者の名前を挙げて、「谷口さんや、藤田さんが調子が悪いのに、スコアが出るのはこういう感じなんだろうな、と分かった」と、妙なところで納得した。

いきなりパットの名手になれた理由は依然として分かっていないが、「この先、1年くらいは魔法にかかっていたいです」と、この日の会見も、最後まで夢見心地だった。

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