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中日クラウンズ 2009

鈴木亨「僕もまだまだやれる」

前半の5番から3連続。キャディの読みがことごとくハマった。「お前、なんでそんなに分かるの、と言いたくなるくらいに」。
50センチは切れる奧から3メートルのフックラインを読み切ったのは、地元・愛知工業大学名電高の同級生。
5年前から、ここ和合と10月のコカ・コーラ東海クラシック限定でバッグを担いでいる平野智彦さんはある年、酔った勢いでこう言った。
「クラウンズで勝つまでキャディをするよ」。
しかし、お互い今年43歳。「僕も、そろそろ体力がやばいですしね」と苦笑いで頭を掻く大親友のためにも、出来るだけ早い実現が好ましい。

もちろん、本人にも相当の気概がある。
今年、石川遼の初参戦で今までにも増して注目が集まったマスターズトーナメント。一緒にテレビを見ながら長男・貴之くんがポツリと言った。
「お父さんは、まだ行ってないねえ」。

確かに、以前は「35歳までにマスターズ出場」という目標を持っていた。しかし年齢を大きく過ぎて、すっかりしぼんでいた夢。
「プロであるからには、1度は行って欲しいなあ」と息子に言われて火がついた。
まして、最終日には48歳のケニー・ペリーの活躍だ。
アンヘル・カブレラにプレーオフで破れこそしたが、「俺だって、まだまだやれる」という気にさせてくれた。
改めて、夢を胸に刻んだ。

岐阜県出身の鈴木にとっても、思い入れの強いこの中日クラウンズは「東洋のマスターズ」との異名を持つ。それだけに、「ここで勝っておかないと、あっちのマスターズにも行けない」と、闘志を燃やす。
いまのツアーは20代、30代の若手が席巻するが、鈴木には自負がある。実は、鈴木は93年から一度も賞金ランキングによるシード権を落としていない。そんな選手は今のツアーには鈴木だけだ。
シード選手の中で、もっとも年長でもある。

今大会は、18年連続出場。
若い頃には数々の失敗もしたが、今は「経験」という武器がある。
また心強いデータもある。あのジャンボ尾崎は出場17年目に、和合を制した。尾崎直道の“初制覇”は48歳。
「僕もまだまだやれる」。
首位と6打差にも諦めない。
親友との約束も、常に頭の中にある。

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