記事

日本プロゴルフ選手権 日清カップヌードル杯 2010

久保谷健一が首位発進

このプロ日本一決定戦で、5アンダーの単独首位発進にも、ニコリともしない。むしろ、最後まで唇をトンがらせたままでプレーを終えた。すでに2002大会のチャンピオン。免疫があるといえば聞こえはいいが、この選手の場合はそうではない。5バーディはボギーなしのラウンドなのに、5ボギーを打ったような表情で、しかもホールアウトするなりいつものように、ボヤキまくった。

「内容的にはオーバーパー。人にはとても見せられないゴルフです」。
“超・マイナス思考”は、この日も絶好調で、「ピンチはあったかって? そりゃほとんどがピンチです。グリーンに半分以上も乗ってない。へたくそすぎます」。

このオフ、試みたスイング改造。
その理由が傑作だ。
「カッコ良く振ろうと思って」。
なんとも漠然とした取り組みは、あっけなく失敗に終わった。
「いじり過ぎて余計に悪くなっちゃって。そのまま元に戻せなくなっちゃって」。
2010年ツアーが開幕してしまった。

真ん中にアジアンツアーを挟んで、先の3戦とも予選落ち。
4戦目を迎えても回復の兆しはなく、もともと悲観的な性格に、拍車がかかった。

こうなると、先の勝利もこの選手には何の自信にもつながらない。
先週末に行われた「ザ・レジェンド・チャリティプロアマトーナメント」で、通算13アンダーをマークして優勝を飾ったが、同大会はアマチュアと組んでまわる2日間のチャリティイベントだ。
「アマの方を相手に楽しくまわる、という主旨でしたが、それだってけっして良いゴルフじゃなかった」と、相変わらず顔をしかめるばかりだ。

それでもこの日の5アンダーは、ひとえにパッティング。
7番で奧から10メートルをねじ込み、17番ではやはり奧から8メートルを決めた。
起伏の激しいグリーンに苦心する選手がおおかたの中で、「うねったり、下ったり、凄い曲がったりというラインも最後にはカップに寄っていくだけ、と考えたら3パットや変なミスをしないで済んだ」と、その要因を挙げたがそれでもやっぱり「僕には何の薬にもならない」と、言い募る。

要は、いくら好スコアが出ても、思い通りのスイングが出来ない限りは、この人が前向きになることは絶対にない。
終始、ボヤキまくって終わったこの日の記者会見。
最後の方はもはや、喋りながら椅子から腰が浮いていた。
報道陣の質問も聞いているのかいないのか。
ひとしきり、奔放に胸の内を打ち明けきったリーダーは、「こんなことしている場合じゃない。練習しなくちゃ」と早足で、夕焼け空の下に飛び出していった。

関連記事