この日のプロアマ戦は朝、コースに到着するなり口々に言われた。「多一、どうしたん？」。周囲の冷やかしに、すまし顔で答える。
「遼くんと間違えたでしょ？」と表面ではおどけつつ、実は照れくさくてたまらなかったその理由は、普段の手嶋らしからぬ濃いピンク色のパンツだ。

近頃のゴルフウェアはとてもカラフル。流行中のカラーパンツも、石川遼の出現でますます拍車がかかった。
手嶋の所属メーカーのミズノでもその流れに乗って、今季は明るい色のウェアを打ち出して来たが、特に今週は主催トーナメントということもあり、ウェア担当が「ぜひ、期間中に着て大会を華やかに盛り上げて欲しい」と持ってきたうちの１本が、それだったのだ。

しかし「カラーパンツなんか、プライベートでも着たことがない。コースでも、黒とか地味な色ばっかりで…」という手嶋にとって、それはかなり勇気の要ることだった。
「どうにも恥ずかしくて…」。
そうかといって、スポンサーの意向も無視できない。
そこで苦肉の策。
ギャラリーがまだいないプロアマ戦のうちに「義理を果たしておこうと思った」のだという。

本戦からは、またお得意のベーシックカラーに戻る予定だ。
「明日からは黒、黒、黒でいこうかなあ、と…（笑）。それがやっぱり、一番落ち着く。だから、もう二度と見られないよ、僕のカラーパンツ姿は！」と、１日限定の“晴れ姿”をアピールした手嶋。
今週のスポンサー試合は全英オープンの出場権もかかっている。
手嶋の中にも胸に期すものはもちろんあるが、「今週の目標はとりあえず、４日間プレーすること」。
闘志はひとまずひた隠しにして心も“普段着”のまま、ツアー通算７勝目とメジャー舞台を目指す。

• 手嶋 多一
• 石川 遼