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キヤノンオープン 2011
久保谷健一が9年ぶりのツアー通算5勝目
この日3番パー4でのイーグルは、昨年の優勝シーンと重なる。同級生の横田真一も、ここで第2打を直接入れて、13年ぶりの復活優勝を飾った。
やはり昨年の最終日も、最終組で横田と回った石川は、そのことを覚えていてこう言った。
「久保谷さんも、おんなじ雰囲気出てました。あの時点で決まってたんですね」。
「・・・そんなの今さら言っても」と、思わず攻める口調になった。「今日はどんだけ苦しんだと思っているの?!」。
最初から最後まで、ボヤキ続けて頂点に立った。実に9年ぶりの優勝インタビューも、ボヤキ節から始まった。「今日はとにかくティショットが左、左、左・・・。もう左の嵐で。もうひたすら耐えるのみ」。3番のイーグルも「気休めにしかならなかった」。5番では一番近い距離から3パットのボギーを打って「俺ってこういうふうに崩れていく」と、早くも諦めムードが漂った。
「初日から、言ってることは変わってない」。ショットの悩みが深すぎて、「優勝争いどころじゃなかった」。前日3日目は、小山内護と石川が揃って最後2ホールの大崩れで久保谷も思いがけず首位に並んだ。最終日最終組は、立山光広を加えて奇しくも石川が、史上最年少Vを達成したときと同じ組合せに、「なんでこうなっちゃったの」と、絶不調時によりによってまた石川との優勝争いに加わって、がっかりと肩を落とした。
立山は「今日は遼の日」と言った。久保谷も同感だった。「今日の僕は、優勝とかそういうパターンじゃなかった」。中盤は、必死のパーセーブが続いた。やっと来た13番のバーディも「左の山から出して、3打目もお情けのように乗っかって8メートルのがボーンと入った。ただそれだけ」。
どのホールを振り返っても、本人がこれは、と思えるシーンなど、ひとつもない。最後にやっとフェアウェイを捕らえたという上がりの2ホールも、なお首をかしげて「なんでそこだけ真っ直ぐ行ったのか。これがホントの七不思議」と、大マジメに言った。
スコアボードは「見ない主義」。やっと最終ホールで自分の位置を確認して、なぜか久保谷は憤(いきどお)る。
「なぜなの。みんなが伸びてないっていうのは、なんでなの?!」。9年ぶりの優勝も、喜ぶどころか「棚ボタです」と、言ってきかない。ツアー通算5勝目にも「ゴルフは運」と信じて疑わず、また「運良く優勝するなんて。世の中狂ってる」と、怒りまくった。「僕はひどい男です」と、自分を責めた。
3日目の12番だ。ここでも大きく左に曲げたが、ボールは何かに跳ね返って出てきた。「木に当たったとばかり」。そう思って何気なくバーディを奪ったが、あとから人に当たったと聞いて青ざめた。その場ですぐに現場に引き返すと男性が倒れていた。何度も詫びる久保谷に「血をダラダラ流して“大丈夫です、僕の不注意ですから”と」。
けなげな地元ファンにも救われた。
石川の大声援に混じって「久保谷!」の声もちゃんと胸に届いた。「本当ならそのひとつひとつに手を振って、応えなければいけない」。地元・神奈川県出身のご当地プロは、しかし「どうやって球に当てようかと。それしか頭になくて」。そんな余裕すらなかった。「その点でも申し訳ない、謝りたい」と、頭を下げた。
「いつもボヤいてばっかりで、マイナスなことしか言えないですが、この優勝で少しはまともな発言も出来ると思う」と、この復活Vを機会に少しはプラスに転じる?!
「次は自分で狙って勝ったという気持ちを味わってみたい」と、いよいよ“専売特許”のボヤキも返上・・・?!
「私もめげないですから、みなさんもめげないで声をかけてください。そしたらたまにはいいこと言うかもしれない。自分を変えて行きたい」と、久保谷は言ったがこの人はやっぱり来週もまた、ブツブツといいながら優勝争いをしている気がする。