記事

VanaH杯KBCオーガスタゴルフトーナメント 2012

河井博大(かわいひろお)は芥屋の高麗グリーンも「嫌いじゃない」

16番で1メートル半のパーパットを残してこの日は、唯一ボギーのピンチも、難なくしのいで上がってきた。66の6アンダーに「久しぶりに僕らしいゴルフが出来た」。ここ芥屋(けや)ゴルフ倶楽部は、トーナメント開催コースとしては、唯一となった高麗グリーンも、「僕は嫌いじゃない」と言えることが強みだ。

「バリバリの高麗で育ったので」。
出身の広島県は、里帰りのたびにホームコースに立ち寄る。
攻略法は、八千代カントリークラブで培った。
「誰もが気をつけていることだと思うが高麗グリーンでは、インパクトの緩みは絶対に禁物です」。
もともと「緩みがちなタイプ」と自覚しているだけに、なおさらここでは強めにヒットしていく。
クセがあるとされる芝目に負けないストローク。
「ここではそういう気持ちを人一倍、出してやる」と、肝に銘じて好発進だ。

昨年は、日本プロゴルフ選手権でプロ16年目にして悲願のツアー初Vを飾ったが、今季はトップ10入りもまだ。
「いや、僕はこんなもんですよ」と、さばさばと笑う。
「去年がたまたま良かっただけで」と明るく言えるようになったのは、師匠の言葉がきっかけだ。

田中秀道に電話をかけたのは先週の日曜日。
「むしろお前にしては、うまくいってるほうなんじゃないか」と田中は言った。
「もともと大した選手じゃないのに、何をいきなり一流ぶっているのか」と、そんなふうなことを言われて、目が覚めた。
「確かに去年は良かった分、今までは許せていた範囲が、許せなくなっていた。さらに上を目指すのはもちろんだけど、自分は一気に行こうとしている。現実と理想のギャップで“一流気取り”も空回り」。

そう気がついたら、とたんに気持ちが楽になったという。。
「お前は今までやってきたスタイルを守っていれば、そのうちまたいいことあるんじゃないか」と田中に言われて、気持ちが晴れた。

熱中症にかかり、しばらくその後遺症に苦しんだのも、昨年のちょうどこの時期。
そんな河井を気遣って、キャディの松村卓さんは対策グッズをてんこもり。
「塩キャンディに、缶コーヒー。クエン酸飲料に、アミノ酸。暑さには塩分と糖分。両方を摂らんといかんらしいです」。
ただでさえ重いキャディバッグにしこたま詰めて歩いてくれる。
「絶対に俺を倒れさすまい、と。ここまでされて倒れたら、俺も終わり」と、そう思うにつけても自然と気は張る。

関連記事