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日本チームが韓国にリベンジ
誇らしげに高々と掲げる者、パターで打つ真似をするお調子者に、しばしじっと杯に見入って喜びを噛みしめる者。何よりそんな選手たちの姿に嬉しそうに目を細め、キャプテン青木が感極まった。「俺は本当に幸せ者。お前たちのおかげだよ!」。
韓国・済州島で行われた「現代キャピタル招待 韓日プロゴルフ対抗戦」は、日本の歴史的勝利で幕を閉じた。2日目を終えて5.5対4.5は1ポイントリードで迎えた最終日のシングルス戦で、5勝5敗。トータル10.5ポイントを獲得し、韓国に1ポイント差で逃げ切った。
青木が、韓国チームのキャプテン・韓長相(ハンジャンサン)氏に向かって胸を張る。
「俺の作戦勝ちだな!」。
それは、メンバー全員も認めるところだ。
勝因は、なんといってもこの日のペアリング順にあった。平均年齢は24,3歳の韓国チームに対して、日本チームは32,2歳。最年少メンバーの石川と、最年長の藤田寛之との年齢差は23歳。つまり、日本はそれだけ幅広い年齢層が、集まったということだ。若さと経験の両方が武器になる。青木はこれを、最大限に利用した。
最終日のシングルス戦は、まずベテラン勢に先陣を切らせる。そして、池田と薗田と石川の若い3人を挟んで、最後に片山晋呉で締めるという算段。
「勝ち方を知っているベテランが、先に2つ3つポイントを持ち帰れば、きっと若手の励みになる」。果たして、ゲームは青木が絵に描いたとおりになった。
まず2組目の宮本勝昌が金亨成(キムヒョンソン)と、2アンダーのタイスコアで迎えた最終18番で、6メートルのバーディチャンスをねじこんで、この日最初の勝ち点をもたらすと、続く3組目の藤田寛之が3アンダーは6打差で、金飛烏(キムビオ)に圧勝した。
小田孔明は「意地でも勝つつもりだった」と鼻息荒く、金度勲・大邱(キムドフン)を4アンダーの2打差でねじ伏せた。横尾要は最終18番で、1メートルのパーパットをしのいで4アンダーは、1打差で李丞鎬(イスンホ)を振り切った。
ベテラン勢が懸命にバトンをつないで4ポイント先取。あとひとつ勝てば、日本チームの勝利が決まるという場面。
ウィニングパットを決めたのは、この日7組目で回った20歳の新鋭だった。金大玹(キムデヒョン)に1打差まで追い詰められて、迎えた最終18番。薗田峻輔のアイアンがうなりを上げた。
135ヤードの第2打は「目をつぶっても打てる」。ピンそば10センチに吸い付いた。
そして薗田はグリーンに上がって初めて今の戦況を知る。グリーン横の大きなスコアボードは、まさにこの1打を決めれば、日本の勝利が決まると告げていた。
タップインのボールがカップに転がり落ちた瞬間、見守る先輩たちからやんやの歓声が上がった。
キャプテンには「よくやった」と、熱い抱擁。
「もう、何も言うことがないくらい、嬉しかったです」という薗田がこの日の18ホールを振り返るにつけて、何より勇気づけられたのがほかでもない。先輩たちの戦いぶりだった。
「ときどき確認したスコアボードは最初の組で、勝ち点が多くて。力をもらえた。緊張とかプレッシャーもなく、自分のプレーをやらせてもらえたから。今日は経験豊かな先輩たちに、助けられたから。青木さんの作戦は完璧でした」。
キャプテンの意図を汲んだメンバーたちが、最高の形でそれに報いた。
記念すべき1回大会で、プレーオフの末に韓国に栄冠を譲ったのは2004年。新生ジャパンが6年前のリベンジに成功した。
青木にとっても、団体戦での勝利は人生初という。
「もう、本当に嬉しいの一言。今はしばらくこの幸せに、浸っていたい・・・・・・」。満面の笑みを浮かべた青木を見るにつけ、メンバーたちには何よりキャプテンに勝利を捧げられたそのことが、一番の喜びだった。