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松村道央がゴルフ伝道師に(2月28日)

村石校長先生(左)念願のスナッグゴルフセットが、とうとう鬼首小にもやってきた・・・!!

鳴子温泉郷の湯けむりをくぐり、ひとつ最初の峠を越えると、そこは一面の銀世界。今回の“ゴルフ伝道師”が訪れた小学校は、「鬼の首」と書いて「おにこうべ」と読む。宮城県大崎市の最先端に位置し、西は山形、北は秋田の2県に隣接する深い山あいの小さな町にある。

2月28日は、早朝から粉雪が舞う中、積もりに積もった雪をかき分けやってきた。スタッドレスのタイヤがゴリゴリと雪音を立てるのに合わせて、伝道師の身も引き締まる。子供たちや先生方のみならず、保護者や地元商工会のみなさんの、今日の日にかける思いは並々ならぬものがある。と、伝え聞くにつれて緊張も高まる。

実際に、校門の前にはこの極寒にもかかわらず、出迎えの先生が2人も立っていて、プロの到着を今か今かと待っておられた。最初に通された教室にはご来賓のみなさんが、ズラリと席を並べておられて冷や汗をかいた。

大変な歓迎ぶりに、思わずつぶやく。「これって責任重大じゃないですか?!」。

大崎市立鬼首小学校の村石好男・校長先生が、最初にスナッグゴルフなるものの存在を知ったのは昨年7月。石川遼はじめ、トッププロたちが被災地の同県・女川町に入った。子供たちに、手取足取り打ち方を教える姿。村石・校長先生は、テレビのニュースで見て「これだ」と思った。

全校児童33人の小規模特認校は、冬の授業にスキーを取り入れるなど、我が校だけの特色作りに力を入れて来られた。おかげさまで、地元のスキー大会ではクロスカントリーに出場した5,6年生の3人が上位3位を独占するなど、めきめきと力をつけてきた。

「ぜひ夏にも何か新たなスポーツを」と、思案していた矢先の運命の出会い。さっそく、日本ゴルフツアー機構が公募するコーチングセットの寄贈に申し込むと同時に、県内にはまだそれほどスナッグゴルフに力を入れている小学校は少なく、今にも手を上げれば今年6月の全国大会に、地区予選なしでエントリー出来ると聞いた校長先生のやる気は、たちまち地域を丸ごとのみ込んだ。

雪が解けたら、近くの「オニコウベゴルフクラブ」が芝の上で練習出来るようにと、コースの一部を開放してくれることになっている。その前に、トッププロ直々の基礎レッスンが受けられる。春の訪れが待ち遠しい子供たちにはなおさら、今日という日をどれほど待ち焦がれたかしれない。

体育館に足を踏み入れるなり、どよめきに包まれて思わずたじろいだ。この日の“主役”は最初、強ばった表情で子供たちの前に立った。スナッグゴルフはツアー2勝目を挙げた一昨年のカシオワールドオープンの地元・高知の小学校で一度、教えたきりだ。しかも今回は、全国大会を目指す子たちが相手だ。「すごいプレッシャー」と、はじめのうちはぎくしゃくとした動きも、子供たちの熱気が溶かした。

スナッグゴルフ講習会は、“1時限目”の授業が終わるころには、その指導ぶりにも子供たちに負けない熱を帯びていた。

それにしても、鬼首の子供たちのやる気には、改めて目を見張るばかりだ。講習会の最後のラウンド対決は、1年生の大沼風翔くんと、2年生の日向葵(ひなき)さん姉弟に“惨敗”したばかりか、「もっと練習して松村プロより強くなる!」と、2人に面と向かって対抗心を燃やされて苦笑い。
さらに、「僕も将来、プロゴルファーになって、松村選手と対戦したい!」と宣戦布告したのは山田清治くん。5年生ながら学校で一番身長が大きくて、すでに170センチもあると聞いて、さすがのプロもつい、子供相手にライバル心を剥き出した?!

「ええっ、本当に?! 俺、もうすぐに抜かされちゃうじゃん!!」と悔しげに、自身は「171.5センチ」と、せめてコンマ刻みの“申請”で精一杯の対抗心。同時に称賛と激励も忘れない。確かに、先のショット練習で、ボールを高く体育館の天井まで届かせていた子だ。山田くんにはプロ棋士になりたいとの夢もまた別にあるそうだが、この日を機に新たに出来た、もうひとつの夢への素質も十分。「スイングにも迫力があるし、すごいね、将来有望だね!」。

6月2日に、茨城県の宍戸ヒルズカントリークラブ(西コース)での開催が決まっている全国大会「スナッグゴルフ対抗戦JGTOカップ」は今年からルールが変わり、5、6年生もエントリー出来ることになった。今年6年生になる山田くんにも出場のチャンスが出来たはいいが、鬼首小のみんなは全員が闘志満々。33人中たった6枠のレギュラー争いは、熾烈を極めそうだ。

帰り際に「また会いに来てね!」と子供たちに懇願されて、松村も言い返す。「みんなも絶対に、会いに来てよね!」。子供たちが初めての全国大会に挑む日は、自分も子供たちと同じ会場で、メジャータイトルをかけて、優勝争いを繰り広げているはずだ。勝てば5年シードの「日本ゴルフツアー選手権 Citibank Cup Shishido Hills 」では、ぜひそんな雄姿で、子供たちと再会したい。「そこでまたぜひ会おう、約束だよ!」。帰路の車に追いすがる子供たちに向かって大声で手を振った。

  • 学校のみならず、地元あげての一大スポーツにしよう、という意気込みが、プロの心をも突き動かして・・・レッスンにも熱がこもる
  • パター戦で7人合計はなんと60点をたたき出した6班はあらかじめ学校側がレッスンしやすいように、と身長別に分けた中でも特にのっぽ揃いだ!!
  • 33人のジャンケンの勝ち抜けで、松村との直接対決の権利を勝ち取ったのは偶然にも“大沼姉弟”。力を合わせてプロをやっつけた!!
  • 別れを惜しんで、雪が降りしきる中、わざわざ校庭まで出てきて見送ってくれた子供たちに感動・・・!!「また絶対に会おうね」と

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