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つるやオープンゴルフトーナメント 2012
藤田寛之が「ガツン、と言わさないと」
この逆質問には、改めて「なぜ、自分が頑張れるのか」という意味の自問自答もあるだろうが、同時になぜほかの人は頑張らないのかという、疑問も含まれていそうだ。
「自分には、もうあまり時間がない」と思うと、自然と足は練習場に向く。「ほかの人はだいたいでいいや、と思うところを僕は、だいたいではだめだ、と思ってしまう」。
眉間にしわを寄せて、貪欲に試行錯誤を繰り返す。
改めて「なぜ頑張れるのか」。
端的に言えば、「それが仕事だから」ということになるのだろう。
仕事でベストを尽くすのは、プロゴルファーに限らず、どの業種でも当然のことだ。
藤田にとっては常に自分に完璧を求めるのも、「ぞれが仕事だから当然のこと」で、キャリアを積んで、目指すものが年々と高くなれば、これまで以上に頑張らなければならないのもまたしかりで、藤田にとってたゆまぬ努力とは、呼吸をするのと同じように、自然なことだ。
「うまくなりたい、という気持ちは年々強くなっていく」。
ジャンボ尾崎や、昨年末にこの世を去った杉原輝雄など、一時代を築いた選手たちは、みなそうだ。
「それがもともとあるべきプロの姿じゃないのかな」と言い切る藤田の辞書に、今年も「満足」という文字はない。
4月のマスターズに初参戦を果たした昨シーズンよりは、スイング調整にもトレーニングにも十分に時間を割けたとは言いながらもやはり、このオフも「充電が足りなかった」と、不満げに藤田は言う。
先週の開幕戦も、相変わらず「不安」を抱えたまま迎えた。会場入りしても、スイングの微調整は続き、ひとつ独自のテーマを作ってどうにか10位タイで初戦を終えたが、2戦目の今週はいきなり、師匠に駄目出しされた。
「自分がやろうとしていることと、正反対の課題を出された」と、この日は慌てて軌道修正に取りかかっていた矢先の急浮上。「芹澤さんにコンセントを差して、足りてなかった充電池を急速でいっぱいにしてもらった感じ。例えはちょっと、アレなんですけど」と、自嘲の笑みも。
火曜日の練習ラウンドは、総勢5人の“チーム芹澤”のために、「前半は宮本と上井、後半の9ホールは河瀬と僕と。プロアマ戦みたいに交代で18ホールを回っていただいて。師匠にいていただくだけで、心強い」と、2年前に今大会で勝った際もそうだったように、今年初の記者会見も、やはりいつものように、芹澤信雄への感謝のコメントで始まった。
オフはどこのイベントに呼ばれても、「生涯獲得賞金10億円の・・・」と、まずはそこから紹介されるようになった。そこで「おぉ・・・」と歓声が上がることは正直、悪い気はしないし、「僕の20年間の蓄積を示す物差し。周囲には確かにかっこよく見えるかもしれない」との自負はあっても「実は現場はすごくかっこわるい」。
口を開けば「ショットが当たらない、パットが入らない」と、愚痴ばかり。「さわやかに、笑顔でやりたいけれど」。忸怩たる思いもあるが、「けっきょく僕は、泥臭い職人的なゴルファーでありたいのかなあ」と、今年も目指すところはそこに尽きる。
「ニコニコやってるやつを、ガツンと言わさないといけないですね。失速はしたくない。このまま勝ちたい」と、強気なことを言いながらも、「結局、最後はニコニコやっているやつに、コツンとやられちゃうんですけどね」と、きっちり自分を落として会見を締めるあたりも相変わらずだ。