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石川遼は3部門受賞にも「何十倍もの努力が必要」
また、平均パット数1位は初受賞の2009年と比べても、「格段に上手くなっている」と、自覚するにつけても、今季は特に、ショートゲームの上達を実感出来た1年でもあった。
グリーン上で記録した1.7072ストロークは、2001年の片山晋呉の1.7119を更新。97年以降でいうなら、もっとも少ない数字である。
「片山さん、谷口さん、藤田さんは」と、パット巧者と言われる先輩たちの名前を挙げて、「どこから打ってもカップに吸い込まれていきそうな雰囲気はある。それに比べたら自分はまだまだ」と謙遜しつつも、「どんな距離のパットも、よりカップの近くを通るようになってきた」と、その域に達しつつあるとの手応えを、掴むことが出来たシーズンだった。
しかし、それでも勝てなかった。
ファンの声がダイレクトに反映される。投票で決まる通称「MIP賞」。「Most Impressive Player賞」は、もっとも印象深いプレーをした選手に贈られる。史上最年少のツアーVを達成した2007年から数えて5年連続の受賞も、本人には「今年、1勝も出来なかったという印象のほうが強いシーズンになってしまった」との反省は、もちろんある。
さらなる高みを目指して取り組んだスイング改造は、1年を通じて多岐に及んだ。「僕の場合は、毎週、毎週、やることが変わるし、それは毎年のことで、今年も良いとこ取りが出来た年」と、相応の充実感も感じられた一方で、青木功も「遼は、曲がったときが大きすぎる」と指摘したように再三のV争いも、大事な場面でショットの不安定性が足かせとなり、チャンスを逃すことが多かったのも否めない。
それも含めて、「僕はまだまだ。1年勝てなかったくらいでスランプといえるレベルでもない」と、未勝利に終わった悔しさ以上に、反省が胸に渦巻いている。
「アプローチ、パットもそう。良かったからといって、ひと息つく感じでいたら、すぐにダメになる」と、年末年始も返上でこのオフは例年以上に練習に励むことを誓った。
確かに、ファンに笑顔の優勝シーンを見せられなかったことは、ひとつ悔いが残る点ではある。「でも、みなさんに笑顔のシーンをお見せするには日頃から楽しく、楽しくじゃなくて、まず努力が必要だと思う」という言葉がいかにも石川らしい。
「ゴルフを楽しむためには、何十倍もの努力が必要で、自分も楽しんでプレーする資格がもらえるように努力していきたい。練習あるのみです」という石川は、新年早々から米ツアーに挑戦するなど、息つく間もなくまたゴルフ漬けの1年をスタートさせる。