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関西オープンゴルフ選手権競技 2011

白佳和(はくよしかず)は「在日として、負けられない」

狭いフェアウェイは「まずは打ち出したい方向に打って曲げること。右を狙ってドローを打つとか、フェアウェイを広く使うようにしている」。それが極意だ。難コースでこの3日間、トータルでフェアウェイキープ率1位。
パーキープ率も1位。ホールによって、自在に球を打ち分けられているたまものだが「それが出来るのも、状態がいいから」。

6月のツアー選手権で、深いラフから打って背中の肉離れを起こした。ほぼ1ヶ月は、まともにクラブが振れなかったが懸命の治療と、今週の猛暑が逆に助かった。

怪我のために、硬くなっていた筋肉。「でも暑いと緩む。だから昨日も、あえて日傘を差さないで、背中を温めてやりました」。

今週は序盤の強い日差しも味方につけて、首位と2打差は大きなチャンスだ。

上がりは16番からの3連続バーディで、「気持ちよく回って来られた」と、笑顔もこぼれる。最終日もこんなふうに、「明るくやろう」と決めている。

予選ラウンドは、連日の猛暑に、プライベートでも親しくしているJ・チョイは残念ながら、体調不良で2日目に棄権をしたが、ちゃんと置き土産をしてくれた。

「あなたはなんで球を打っていないときまで、そんな暗い顔をしているの?」。チョイに言われてはっとした。
「僕はメンタルが弱い」。だから、どんなに良い場面でも「ネガティブなことばかりを考えてしまう」。ラウンド中も、うつむき加減に歩いてしまう。

「真剣になるのは、ショットするほんの20秒ほどでいいんだよ」とチョイに言われて、反省した。今週は、予選ラウンドからショットの合間はキャディと会話をしたり、楽しくプレーすることを心がけている。
「明日も暗くならないように。上を向いて歩いていこう」と決めている。
「今日は最後もテレビに映ると思って、バーディが取れた」。4メートルを沈めてこぼした笑顔をぜひ、見てもらいたい人たちがいる。

このたびの震災の被災者。中でもとりわけ自分と同じ境遇にある在日韓国人の方々だ。「昨日も連絡をもらって。頑張ってください、と」。
逆にエールをもらって在日3世の31歳が、奮い立つ。
「被災地に良い知らせを届けたい」。

首位には趙(チョ)。白の後ろの3位タイには2打差でドンファン。韓国勢の包囲網。
「在日として、負けられない」。
ライバル心をむき出して、悲願の初優勝を狙っていく。

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