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日本プロゴルフ選手権大会 日清カップヌードル杯 2014

手嶋多一は「今週もお父さんは日曜日まで帰らない」

ツアーきっての「練習しないプロ」。その選手が珍しく、下見も入念だった。自身初ラウンドだったここゴールデンバレーゴルフ俱楽部は驚異のモンスターコースとの評判に、一度見ておかずにはいられなかった。

2週前の関西オープンは、同じ兵庫県での開催で前週日曜日のプロアマ戦のあと、翌月曜日に「せっかく近くにいるのだから。回っておこう」と、やってきた。

そのとき、即座に思った。「このコースはきっと、谷口さんが得意だ」と、予測したとおりに、2日目にして午前スタート組が終了した時点では、首位タイで肩を並べて、もうひとり中堅の高山忠洋は、奇しくも3人ともイニシャルが同じで「T・Tトリオで頑張ります」。

18ホールのうち16ホールで池やクリークが絡み、うねるフェアウェイ。ところによっては150ミリを超えるラフ。起伏の激しいグリーンは、経験と技のベテランこそ真骨頂の舞台だと、手嶋も感じていた。

「無理せずに、いかに無駄なボギーやダボを打たずにおくか。悪くてもボギーにとどめる。そういうコースこそ、ベテランが上に来る」と予言した本人こそがリーダーボードに名前を並べて「この難しいコースで信じられない」。
この日はボギーなしの68で上がってきた。最大のピンチだったという4番では、傾斜を登り切らずに転がり落ちてきた3打目も、ベテランの小技でピンそばにぴたりと寄せた。難なくボギーを回避した。

ホールアウトして、5分後にはコースにいないと言われるのが手嶋だ。この日も好スコアの余韻にひたる間もなく、ひととおり報道陣の問いかけに答えるとそそくさと、「じゃあ、もう帰ります」。
怠けているわけではなく、これがプロ21年目のルーティン。もともと神経質な性格は、「最初はこんなじゃなかった」。デビュー当時はそれこそ「いつも最後まで練習場にいた」。でも考えすぎるたちは、「ここにあまり長くいると、いろんな情報がありすぎて、かえってゴルフができなくなる」と気が付いた。

「スイングに悩んでしまって、プレーに集中できない。出来るだけ、シンプルにやりたいと思った」。99年にツアー1勝をあげたころから、練習場でしゃかりきになって打つことをやめた。

宿にはいつも、あえてパターだけを持ち帰る。カップの縁にぶつけて打つ強気のストロークは、部屋のジュータンの上で培われる。「いままた、パットの調子が戻ってきましたので」。昨年の賞金ランキングは70位と薄氷のシード権保持は、予選落ちも多くて、4歳になる長男はお父さんは金曜日に帰ってくるものとすっかり期待してしまって今年は毎晩電話で「いつ帰ってくるの」とせっつかれて嬉しいやら悩ましいやら。先週はホスト試合のミズノオープンに続くV争いに「今週もお父さんは日曜日まで帰らない」。その分、泰斗(たいと)くんには日テレでV争いを見てもらおう。

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