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2013年のNEW FACE<内藤寛太郎(ないとうひろたろう)>
五輪代表選手育成のための“宮崎キャンプ”は2月18日から2回目を迎え、前回とはまた新たな顔ぶれの30人が、トレーニングやフェニックスカントリークラブでのラウンドをこなす合間には、各専門分野から多彩な講師陣を迎えたセミナーを受講する、という5日間を送っている。
内藤にはさっそく初日から「新鮮な毎日です」。なんといっても、コンディショニング・スーパーバイザーの廣戸聡一氏だ。人間の体の動かし方には4つのタイプがあるとする氏が考案した「リポーズトレーニング」を受けると、参加した選手の誰もが思うことだが、内藤も今までのスイングはなんだったんだろう、と思う。
「今までずっと、非常に効率の悪い体の動かし方をしていたんだな、と」。
廣戸氏にひとことふたことアドバイスをもらっただけで、内藤もそう反省せずにはいられない。
初日に習ったことを、翌日は19日から始まったフェニックスカントリークラブでのラウンド合宿で、さっそく試してみた。
「今までになかったくらい、良い感じで振ることができて」。
同コースは高千穂と住吉、そして日南の3コースからスタートして腕を競い合うが、その3コースを見渡してもベストスコアの72で“1ラウンド目”の優勝を飾った。
「今日は大雨でウェットな状態」。しかも、松林にセパレートされたこの名門難コースは内藤にはこれが初めてのプレーで、「上々の滑り出し」。ラウンドはトーナメント形式で4日間をかけて争われ、22日のセミナー最終日には、総合勝者も決定する。
前回初回のこの強化合宿の優勝スコアは通算2アンダーだったそうで、内藤は「ぜひこの記録を抜いてみたい」と、気合いが入っている。
3年後のリオ五輪はもちろん、内藤が今季目指すのは、もちろん初シード入りだ。
この表題には「NEW FACE」とうったが、実は内藤は今年がツアー初参戦ではない。
レギュラーツアーで11試合を戦ったのは、2009年。
当時はチャレンジトーナメントの賞金ランキング上位者に与えられる、シーズン前半期の出場権を得て戦ったが、当時はわずか2試合しか予選通過が出来なかった。
「あのときは開幕前からものすごく気合いが入っていて。完全に空回りをしてしまった」と、振り返る。「あの反省から今度は絶対にそんなことがないように。今年は自然体で、楽しくゴルフがテーマです」と内藤は言う。
実際に、昨年の出場優先順位を決めるファイナルQTは「のびのびとラウンドしたら、結果が出た」と、今年はランク8位からの再挑戦だ。
一つ先輩に藤島豊和、2学年上に宮里優作や岩田寛。3つ下には池田勇太と、強豪ひしめく名門・東北福祉大出身。
それだけに、生存競争も激しく「レギュラーで試合に出たのは、大学3年生の秋のリーグ戦の1試合のみ」と、大学時代はけっして目立った存在ではなかったが、2006年に一念発起。
プロ転向を果たして7年目になる。
「もう全然若くないんですが・・・」と、30歳は苦笑いでそれでも3年後の五輪は「チャンスがあれば出てみたい」と、目を輝かす。
福島県の郡山出身。故郷には、今もご両親が住んでいる。近頃ではその現状も、テレビや報道ではほとんど見ることもなくなったが、地元の人々の不安は今も消えることはない。
「家族もそうですが、内心は心配でもここで頑張っていくしかしょうがないと思いながら、みんな生活しているんです」。自分の活躍が、そんな人々の希望の光になればいい。