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「TRY TO WIN !!」By RYO ISHIKAWA
ステージ中央のロイヤル・トロフィを挟み、両チームの面々が壇上の席についてすぐ、ひどくなつかしい声が会見場に響き渡った。
わざと大仰な咳払いのあとで、おどけたように「ハッピー・ニュー・イヤー!」。
それは、スペインからの国際電話。主は欧州の初代キャプテン、セベ・バレステロスその人だった。
第1回の2005年から2年連続でキャプテンをつとめ、欧州にロイヤル・トロフィをもたらしたセベ・バレステロスが病いに倒れたのは一昨年の10月だった。
数時間にも及ぶ脳腫瘍の除去手術はそのあと4度にも及び、いまもリハビリ生活は続いている。
しかしそんな不幸など、微塵も感じさせない明るい声が続いた。
「みんなと一緒にいられないことはとても寂しいが、そこにはグレートなキャプテンが2人もいる。僕は何も心配していないよ」。
この言葉に誰よりも発奮したのはもちろん欧州の新キャプテン。昨年のホセ・マリア・オラサバルに続き、セベの後任を引き受けたコリン・モンゴメリーは、自らもゴルフでチームを引っ張るいわゆる“プレーイングキャプテン”をつとめるなど、相当の気合いが入っている。
選抜メンバーも7人中4人が世界ランクトップ50だし、「私以外はみな、昨年のツアー優勝者」と、苦笑混じりに自慢するほど選び抜かれたチーム編成で王冠の奪還に挑む。
迎え撃つアジアチームもまた、負けてはいない。2年連続で大任をつとめるキャプテン・ジョーこと尾崎直道は昨年、悲願の初Vにただ酔いしれていただけではなかった。
歓喜の中にも学ぶべきことは山ほどあり、その中でも強く痛感したことは、「このゲーム方式は初日、2日目のチーム戦が大きな鍵を握るということ」。
そのために選手の実績や実力はもちろん、今年はメンバー同士の相性にもかなりこだわった。
「実際に組んでどうかということまで考えて選んだ。それぞれがみな、各自の役割を自覚し、良い仕事をしてくれるものと確信している」と、早くもその采配に自信をのぞかせる。
今年のコースセッティングは特に、うっそうと生い茂ったラフが手強いが、ジョーご自慢の精鋭たちにかかっては、それすらも連覇の障害にはなりえないだろう。
そして何より「うちには、若い力がいる」。
日本ツアーが誇る18歳の賞金王は、2年連続の舞台でなんと堂々と英語で質疑応答をこなすなど、その成長ぶりを見せつけた。
「今年もまたここにこうしていられることは、ファンやスポンサーや家族のおかげです」と、相も変わらず感謝の気持ちを即興の英文に乗せたあと、Try to win!」と高らかに宣言。
キャプテン・ジョーの確信めいた微笑みが、いっそう深くなった瞬間だった。