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目指すは下克上!? 竹谷佳孝(たけやよしたか)と甲斐慎太郎は宮崎合宿で虎視眈々と
「ていうか、僕らレベルの選手が出たいです、とか言うのはちょっと違うと思うんですよ」という甲斐慎太郎はジュニア時代に地元九州で大暴れ。ツアーも1勝の実力も昨年は、予選会のQTでも失敗した立場では、確かに強いことも言えない。
竹谷佳孝は、甲斐のふたつ上の34歳。昨年、チャレンジトーナメントの“最終戦”「JGTO Novil FINAL」で1勝をあげて、賞金ランクは2位につけて、ようやく今季前半戦の出場権を手に入れた。「僕は遅咲き。時間がかかるタイプなので」と、甲斐と口調を合わせて笑った。
この宮崎合宿は2人とも、初年度の昨年に続いて2度目の参加だ。「去年やってみて、必ず何か役に立つことが得られると感じたので」。たとえば、まず自分の体のタイプを知り、軸を意識しながらやる「リポーズトレーニング」で竹谷は昨年、初日から早速、極度の筋肉痛に苦しみ、ラウンドどころではなかった。「でも、今年はなぜか楽勝で。去年よりメニューが軽いのかな」とも思ったがどうして。廣戸聡一トレーナーをはじめ、講師陣のみなさんは昨年よりも、明らかに内容を進化させたメニューを作ってきてくださっており、軽くなっているわけがない。昨年の講義を踏まえてトレーニングを続けてきた竹谷自身の身体能力が、確実にあがっていることを、物語っている。
廣戸氏のお弟子さんで、合宿の担当コーチをつとめる二串幸之助さんも、言っている。「昨年の合宿は、1回5日間の日程のうち、4日目あたりからようやくみんな体が慣れ始める感じでしたが今年は仕上がりが非常に速いです。竹谷さんのような“経験者”を見て刺激を受けた人たちが、ますます前向きに取り組むことで、全体が底上げされるからでしょう」。
この宮崎合宿は、昨年の初回から廣戸氏が提唱する「4スタンス理論」を取り入れている。人間の体の動きには、4つのタイプがあるとされる独特の理論は竹谷も思わずうなってしまう事柄ばかりで、「もう少し、早くにこの理論に出会えていたら・・・」。
小中高と、野球に打ち込んできた竹谷だったが、腰をひどく痛めたのは地元山口県の宇部鴻城高2年のとき。「レギュラーを取る自信があっただけに、ますます練習に打ち込んで無理をしすぎた」。後悔してもあとの祭りだった。夢半ばで諦めるしかなく、また長く内野手をつとめてきた後遺症も深刻だった。
そんなとき、「オヤジが、今までとはまったく違う体の動かし方をするゴルフをしてみれば」と言われて開眼。「最初はスライス球ばっかりだったけど、球をしっかり捉えることが出来た」。もっと基礎から学んでみようと、小倉にあるゴルフ専門学校へ。4年間の在学中は、アメリカの短期合宿に出かけたり、「上には上がいる」と、世界を垣間見る絶好のチャンスにも恵まれた。卒業後は広島県の賀茂CCで研修生に。4年の修行ののちに、2006年に晴れてプロ転向を果たした。
デビューからちょうど10年。半月板や右手首の故障など、度重なるケガに悩まされてきただけに、廣戸氏との出逢いが「もう少し早かったら」と思うのは当然。それでも、「それも良い経験」。
確かに本人のいうように、ここまでそれなりの時間を要したかもしれないが、「それでも腐らずに、地道に頑張ってきた」との自負もある。
この宮崎合宿は2度目の申し込みの際に、昨年の合宿で交流が深まった甲斐にまっさきに連絡を取った。「一人ぼっちでは、さみしくてやれない」。同じ年頃の2人の子を持つ父親は、2人ともそんな境遇も似ていることから、ウマが合う。甲斐も2年連続で参加すると聞いて喜々として、甲斐の地元でもある宮崎入り。
2人1組のトレーニングでは互いにムチ打ちながらも和気藹々。合宿は回りを見渡せば若い選手が大半の中で、ふと甲斐が「俺たちは下克上組」と言い出して、竹谷も笑いながらうなずく。三十路を過ぎて、これから期待の新人とはいかないが、酸いも甘いもかみ分けた中堅どころの意地は見せたい。「まずはシード権の獲得」と復活をにらむ甲斐と2人、下から若い力を突き上げていくつもりだ。
「JGTO強化合宿in宮崎フェニックス・シーガイア・リゾート“オリンピックを目指して”」は、27日から5日間の日程で第1回がスタート。初回は残り2日。若手に混じって中堅2人も奮闘中だ。