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藤田寛之は「俺を本気にさせたな・・・!!」(全英オープン2日目)

口調はいつもどおりに静かでも、藤田はかなり怒っていた。昨年のこの全英オープンから数えて、丸1年。メジャー4戦で、すべて予選落ちに「いい加減、結果を出したい。それなのに、今回もはじき返された感じで。ここ2、3年はずっと空回りしている」。

今回の敗因はなんといっても、初日のパット。パットの名手にはありえない、3パットを4回もした。「今日も7番で1回やった。2日でトータル5回は、あまりない。流れを自分から断ち切るようなこと。それは非常にもったいない。」。

確かに、初日のグリーンは本当に、経験したことのような速さと硬さに、他の誰もが同じように苦しんだとはいえ、それでも得意分野で「あれだけ乱れてしまうとは」。どんな条件であろうとも、最小限のケガにとどめて対処していく。「そこも、技術なわけで」。昨日はそれが、出来なかった。

専属キャディの梅原敦さんは、「今日の藤田さんのショットなら、日本で優勝争いをしていますよ」と言った。しかし、ここはリンクスコースだ。かちかちの地面に、日本と同じようにいくわけがない。
「あんなフローリングの上から打つみたいなのは・・・。日本では、やらないので」。44歳にも経験がなかった。だから対処がしきれなかった。
「でもこっちの選手はクリーンに拾っていく技術がある。バンスを当てに行かない打ち方をしている。でも日本では、そういう打ち方をする必要がないので」。ベテランの賞金王にもまだまだ未知の世界はあった。

技術の差を痛感した2日間。「こちらの選手はハンパないうまさ。良い経験をさせてもらいました」と、つい言ってしまってからすぐに言い直した。「経験は、もういいからそろそろ結果を出さないと」。相変わらず口調は穏やかでも、話しているうちに、ますますこみ上げてきた。
「日本の賞金王ですよ」と、自らの立場を引き合いにして、「それなのに、このていたらく。困ったもんだ」。

藤田のほかにも決勝ラウンドに進んだのは片山と松山だけで、日本勢は軒並みリンクスコースに敗れて、「何やってんですか、日本人は」と吐き捨てたセリフも結局、自分に突き刺さる。「むかつく。納得いかない。もっと上手くなりたい。結果を出したい」。思いは募るばかりだ。

自分への腹立ちが、いっこうに収まらない藤田にそっと歩み寄った人が。
青木功。テレビ解説で、ここミュアフィールドに来ている。「日本に帰っても頑張って」。慈愛のこもった声、右手を差し出されて「嬉しい。ジンと来ます」。そして、これはあまりにか細い声で、青木にも聞こえなかったが「もうほんと、嫌になっちゃう。教えてください、青木さん」。
とにもかくにも大御所のおかげで少し、気持ちが和らいだら、今度は闘志がわいてきた。
「・・・俺を、本気にさせたな!!」。打ちのめされればされるほど、ますます闘志を剥き出すのはもう、この人の性分としか言いようがない。

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