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ダイヤモンドカップゴルフ 2013

松山英樹がプロ2勝目【インタビュー動画】

毎年、各地の名門コースを巡るサーキットトーナメントは今年、4年ぶりに大洗に帰ってきたが、21歳も4年ぶりにうんと逞しさを増して戻ってきた。「あのときは、ベストアマチュアとして表彰式に出ましたが、ずいぶんと成長できたと思います」。
同い年の石川遼らとともに30位につけて、初々しく記念撮影に収まったのは2009年。当時はまだ明徳義塾高校の3年生が、真の強者を選ぶと言われるコースでチャンピオンとして、いま堂々とここに立つ。
尊敬する中嶋常幸と首位で並んで出た最終日は、つい2週前の自分との戦いに打ち克つプロ2勝目にもなった。
「トップでスタートしながら負けた日本プロ」。あのとき、最終日の1番ホールで「簡単に打ち過ぎてしまった」と、わずか50センチのパーパットをみすみす逃したこと。「今でも後悔している」。防げたはずのミスは、悔やんでも悔やみきれずに怪物と呼ばれる21歳の心にも戒めとして、深く刻みつけられた。

「同じ失敗は絶対に繰り返さない」。東北福祉大の阿部靖彦・ゴルフ部監督と固い約束を交わしながらも、やっぱり「また負けるんじゃないか」と、たとえすでにツアー2勝の超大型新人が、不安になっても無理はない。

ここ茨城県の大洗ゴルフ倶楽部は、先に上がった選手ほど有利といわれる。特に強い潮風を受けながら、海沿いを這うように進む16番から上がりの3ホールは「差があってないようなもの」と松山も言ったように、たとえこの日の松山のように、2打差をつけて迎えても、どんな波乱が待ち受けているかも分からず、逃げる立場にとってはなおさら大きな重圧に、これまでにもむごいまでの逆転劇が、幾度も繰り広げられてきた。
この日の松山も、やっぱり「16番からがいちばん苦しかった」と次の17番では右の林に入れてボギーを打って、最終ホールを残して同じ組のS・J・パクと1打差。「日本プロで知った逃げ切ることの難しさ」を、改めて思い知った場面だ。
あの教訓を、無駄にはしない。「あの経験があったから、今日は勝つことが出来たと思う」。

大学進学前に、阿部監督に体力強化を命じられて以来、いまも試合中にもトレーニングは欠かさない。特に、鍛えられた強靱な下半身は、タフな条件が続く終盤にもスタミナが、枯れるどころかむしろ終盤こそ上り調子で向かっていける。
同じ最終組で回った58歳は、松山を評して「日本のことわざにもある“短気は損気”。彼はその逆なわけ」と、シニアならではの含蓄のある表現で言った中嶋。

「人生でも短気は色々ぶち壊してしまうけど、彼には短気より根気がある。粘り強さがあるし、無茶をしないよね。出来ることをしっかりとやる選手」。この日は前半に、その中嶋に一度は単独首位を譲っても、「勝つか負けるかは人との勝負。中嶋さんを、ずっと見てはいたが、極端に意識をすることはなかった」とごく冷静に、松山は「それよりも、目の前の1打をどれだけ少なく上がれるか。そのことだけを考えた」という。

後半は、耐えに耐える展開に「イライラしてストレスがたまった」とは言いながら、「難しいコースなので。伸ばすというよりは、ボギーを打たないことが大事」と、ティショットでは刻みに徹して、人並み外れた集中力が途切れることもない。勝つために、いま何をすべきか。最善の策は何か。どんな場面でも、その一点だけに心を研ぎ澄ましていけるから、松山は強い。

いよいよ最後の18番は、ティショットが右のラフ。ピッチングウェッジを握った180ヤードの2打目は、「グリーンの右に落としたら、絶対にだめ」と、是が非でも避けたかった。むしろ、せめて「奥なら上りのパットが残る」と、硬いグリーンに勢いよく弾かれたボールも、どうにか奥のカラーで止まって、最後はすべて計算どおりに事を運んだ。

対するパクは、松山が回避したグリーン右下のラフにつかまった。案の定、打ち上げのアプローチもグリーンに届かず、ボギー以上が確定的となり、松山が微妙な距離のパーパットを外しても、勝てるという状況にも、「外したら、かっこわるい」。
連続ボギーの勝ち方など、スーパールーキーにはありえない。慎重に沈めて歩み寄るなり、「外したら、ぶっ飛ばしてるとこだった」。中嶋にもこの上ない祝福を受ければ、なおさら「入って良かった」と、喜びに胸をなで下ろす。

「今日は無駄な1打を打たなかった。日本プロの悔しさを晴らすことができた」と、2週前に9打差からの大逆転を許した金亨成も今回は2位に振り切り、リベンジも果たした。「今日は崩れかけてもカバーして、ボギーを最小限にとどめることが出来た」と大洗での逃げ切りVには、なおさら大きな価値がある。

デビューからこれで5試合は一度もトップ10を外さず、ルーキーでの年間2勝はデータの残る85年以降としては、初の快挙だ。超速のツアー通算3勝目にも、松山には不満がある。わずか5試合目のプロ2勝目に浸るというよりは、その間に挟まれた、2度連続の2位。「日本プロとクラウンズ。あのとき続けて、勝てなかったことが悔しい」というから、勝利への欲も相当なもの。
尋常ならぬ貪欲さで、毎試合のようにV争いを繰り広げる快進撃も「ワールドランキングをひとつでも上げるためにも、上位で戦い続けないといけない」と、高い目標がぶれることもない。これで、早くも7400万円近くを稼いで史上初のルーキーでの賞金王も「今は、1戦1戦を大切にこなしていくだけ」というにとどめたが、今の勢いならば夢物語でもなくなる。
来週には全米オープンも控える。「もっともっと練習をして、まずは予選通過を目指して日本に良い報告が出来るように頑張る」。栄光への階段を猛スピードで駆け上がっていく。規格外の怪物が、次はいったい何をしでかしてくれるのか。

  • 「連続ボギーでは上がりたくない」外しても問題ないパーパットも、あえて気合いで入れた
  • 最後のパーパットは「外していたら、ぶっ飛ばしてるところだった」と中嶋に言われて
  • あれから4年、表彰式で成長した姿を見せた
  • そしてこれは4年前の今大会。チャンピオンの兼本貴司(左)とベストアマチュア賞の記念撮影。初々しい・・・!!

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