こう見えて、けっこう好き嫌いが多い。この日、子供たちと一緒に席を並べた給食は、チャンポン麺の中に入っていたニンジンもそのひとつ。「でもプロが残したらまずいでしょう」。目をつぶって無理に飲み込んだが、午後から行う「夢を持とう」の講演会と比べたら、そのくらいの我慢はなんともない。
5年生全員にしたためたサインも、確かに数の多さに骨は折れたが「どうってことない」。まして、午前中のスナッグゴルフの実技講習会は、普段の試合と道具こそ違えど、得意分野にむしろプロの腕が鳴る。
「講演会はともかく、講習会はまずまず出来たでしょう」と、普段めったに自分を褒めない選手が珍しく、その成果にご満悦。
子供たちの元気にも乗せられた。全校児童716人のマンモス校は、今回の対象学年となった5年生の3クラスだけでも100人を優に超えて、実技講習に限っては、プロひとりで全員は面倒見きれない。そこで、くじ引きで1クラスに絞ることになった。それだけに、プロ直々のレッスンを受けられる特権をゲットした5年2組のみんなの張りきりようは、相当なものだった。
最初の基本練習ではおとなしかった子も、いざ真剣勝負がかかれば、ますます気合十分。8班対抗のチーム戦は、5人の合計点で争うパター合戦から早くも白熱した戦いとなった。津村菜優さんがチームリーダーをつとめる班は、4人組の補充として手嶋が加勢しても、35点しか稼げずプレーオフにも残れなくて、「とても残念!」(津村さん)。
40点を獲得した班が4つもあり、サドンデス方式は小早川祐輝くんがリーダーをつとめる班が勝ち残った。どのストロークでも10点満点をたたき出した野村佳生くんの大貢献もあって、みごと勝利に、憧れの手嶋プロとハイタッチ出来るご褒美が・・・・・・!!
「もったいなくて、手が洗えない!」と、感動しきりは麻生明里さんと橋本唯恋さん。
「手嶋プロの手はデカかった!」と、広谷烈くんもジーン・・・と来た。
そして、クライマックスのラウンド対決で、手嶋に挑戦状を突きつけた守田智徳くんと、百富(ももどみ)敏恵さんに、梶原伸之・校長先生も加わって、3人束でプロをこてんぱんに打ち負かした。
校長先生は1、子供たちはハンデを2ずつもらい、百富さんは校長先生と並んで2打でカップインして優勝を飾り、守田くんも「緊張して手がぶるぶる震えた」と、プレッシャーの中でも4打でまとめてトッププロを1打差で最下位に退け、勝利にひたった。
「今日の子供たちは本当に楽しそうでしたねえ」と、それがなにより嬉しかったという梶原・校長先生。百富さんには、ひとつ悩みが増えてしまった。「卓球もいいし、バトミントンもしたいし、・・・スナッグゴルフもいいなあ、どうしよう?!」。
この日2月22日に、手嶋が広島県の大竹市立大竹小学校で行った“ゴルフ伝道の旅”で、講師として応援に駆けつけてくださった枝広美子プロは、同校の卒業生でもある。県下のスナッグゴルフの普及にも熱心で、やはり地元出身の倉本昌弘と日々奔走されており、昨年のスナッグゴルフ全国大会では東広島市の三ツ城小学校が優勝を飾るなど、ここのところ”広島勢”ががぜん頭角を現しているのも、その成果にほかならない。
梶原・校長先生は、大竹小学校もぜひそのブームに乗ろうと日本ゴルフツアー機構(JGTO)が毎年、公募している分のみならず、枝広プロと倉本が地元で開いたチャリティコンペを通じて募集していたスナッグゴルフのコーチングセットの寄贈にも、“W応募”をかけておいた。
どちらか当たればとの目算はみごとハマって、なんと両セットとも当選してしまった。全校生徒数が多いだけに、道具だって多いに越したことはない。児童のやる気も盛り上がる。さっそく授業に取り入れたら評判も上々で、この春からはスナッグゴルフも放課後のクラブ活動に加えることになった。
もちろんクラブは原則として、1人1種目しか選べないわけだがこの日、講習会ですっかりスナッグゴルフにハマったことで、やにわに百富さんの逡巡が始まったわけである。「今日はすごーく楽しかったからなあ!!」と、思うにつけても候補の3つのうち、どのスポーツを選ぼうか。迷うのもまた楽し、だ。
一方、「私はもう、スナッグゴルフに決めてます」ときっぱり言ったのは、クラスメイトの早羽光枝さん。お父さんに連れられて、もともとゴルフの経験はあったそうだが「スイングでよく分からない部分があったので。今日、プロに教えてもらえてほんとうに良かった」と、さっそくナイスショットを連発した早羽さんに、手嶋も太鼓判。
「この子は筋がいい!」と褒められて、「すごく嬉しい! これからもっともっと頑張って練習します!」。講演会の出来では反省ばかりでも、講習会では子供たちからそんな声も直に聞けたから、それだけでもまずはよしとした手嶋だった。