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“元祖”の武藤俊憲が「獲り返してやりました」

年末恒例のジャパンゴルフツアー表彰式での表彰対象として新たに設定されたのは、2008年。その初年度から2年連続の受賞に、「トータルトライビング賞=武藤俊憲」というイメージがついた。

ドライビングディスタンスとフェアウェイキープ率をポイント化して決定する同賞は、本人にも「飛んで曲がらない男は自分」という自負が、ひそかにあった。

それだけに昨年は、10位に陥落したことへのショックは大きかった。
「どうして1位になれなかったんだろう。そう考えたときに、やっぱりプロゴルファーは“ゴルフをしないといかん”と」。
体力強化を目的に、もっぱらトレーニングに励んだ昨年のオフ。
その分、ラウンドや打ち込みの時間が大幅に減ってしまったことが原因と分析。
反省から今オフは、例年どおりのスケジュールに戻したら、たちまち持ち味がよみがえった。
「弟弟子から獲り返してやりました」と、ニンマリと笑った。

昨シーズン、武藤から“お株”を奪ったのは松村道央だった。やはり谷口徹を“師匠”と慕う一人だ。「でも、僕らは谷口さんに“弟子”とは認められていないんですけど」と、武藤は笑う。

「弟子にするとは言ってない」。
谷口から冗談交じりに言われて、武藤も負けじと言い返す。
「じゃあ、谷口さんをライバルと呼んでもいいですか?」。
「あほ〜!」と、一笑に付される。
そして得意げに、谷口は決まってこう言うという。
「おまえの生涯獲得はなんぼや、と」。

確かに、生涯獲得賞金は3億円超(ランク91位)の武藤は、同13億超の谷口には、まだまだ足元にも及ばない。
それでも、今季はツアー通算4勝目をあげた11月のダンロップフェニックスで優勝賞金3000万円(54ホールの短縮競技)を上乗せて、「やっと差が10億円ほどになったので」と、武藤はニヤリと笑う。

今年33歳。「谷口さんの歳までに、ちょうど10年ありますので。これから1年1億円ずつ積み重ねていけばなんとか追いつける」と、これからも正確無比な豪打を武器に、師匠の背中を追いかけていく。

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