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田島創志がゴルフ伝導師に(5月12日)
田島が5月12日に訪れたのは、県立霞ヶ浦聾学校。本当は、どの講義も自ら手話でこなして、子どもたちとの距離をぐぐっと縮めたいのはやまやまだが、そこはさすがにハードルが高くて、冒頭の挨拶をするので精一杯。
「おうちで手話サイトを見て、勉強してきたのだけれど」。ちゃんと通じるかなとたどたどしく、それでもみんなに拍手喝采をもらって「みんな喜んでくれて、良かった」と、まずは最初の掴みはOK。
5月晴れの抜けるような青空に向かって、みんなで思い思いに放ったボール。最初は慣れない手つきの子たちも次第に打ち解け「ゴルフは疲れたけれど、やれば出来ることが分かりました」と、達成感。「プロにスイングを褒めてもらって嬉しかった」と、巧みにやる気を引き出す熱血講師だ。
本職の先生たちも舌を巻く。黒板の前でも臆することなく、滑らかなしゃべり口。ちょっぴり難しい大人向けのお話でも、しっかりと子どもたちの心に届ける。理路整然とした午後の講義は、不遇の時代に培った。
「人生は、山あり谷あり」。良い時も、悪い時でもそのときの自分と向き合って、山も谷も味わい尽くして一生懸命頑張れば、必ず自分のためになる。道は必ず開けることを、子どもたちにも分かって欲しかった。
耳の不自由なお友だちにも出来るだけ分かりよいようにと板書も縦軸、横軸を駆使して、3D化して見せた。父親の厳しい指導で10歳でゴルフを始めたときは、コースで132を打った創志少年が、ツアーで自己ベストの62(06年の中日クラウンズ)を記録するまで、どのような道のりをたどったか。黒板を目一杯使って年代ごとに要所、要所の解説書きを惜しまず、大事なところは何度も繰り返して伝えた。
<田島にとっての人生の山>
・中2、中3、高2、高3の群馬ジュニア優勝。
・高3で日本ジュニア3位、日本代表に。
・強豪・日大では2年でレギュラー。
・同4年で、歴代に丸山茂樹ら錚々たるメンツのキャプテン就任
・プロ転向後27歳で久光製薬KBCオーガスタ(現RIZAP KBCオーガスタ)で1勝。
<田島にとっての人生の谷>
・高1で手首の怪我。6ヶ月ゴルフが出来ず
・日大3年、レギュラー落ち
・卒業後に米アリゾナで武者修行中プロテストのエントリーミス。1年を棒に振る。
・30歳でイップスに
・出場権すら失い預金ゼロに
高1で手首を怪我して、半年間ゴルフが出来なかったときは、本当につらかった。「でも、出来ない間も諦めずに走ったり、トレーニングを続けていたから次の年は日本で3番目になれた」。その瞬間は落ち込んだり、苦しかった思いも糧に、何度も谷を越えてきた。
「プロゴルファーになるという夢を持ったのは中学生のとき。山を越え、谷を越え、目の前のことを、ひとつひとつ一生懸命にこなしていくうちに、夢が目標になり、目標が具現化されていきました」。
どん底のときも、ツアー1勝の経験を生かして、活躍の場を広げた。「ゴルフを教えたり、こうしてみんなの前でお話が出来たり!」。講演会の依頼も積極的に引き受けて、話術も磨いた。今年は、渡辺司と佐藤信人とともに、JGTO理事に就任したり、強いリーダーシップは、日大4年のキャプテン時代に培った。
30歳でパターのイップスにかかった時には、さすがにいよいよ出口のないトンネルに入ったかに思えた。「イップスって、たとえばみんながご飯を食べたいのに、お箸で思い通りに食べ物を掴めない。車で左にハンドル切って、右に曲がっていくような。手が勝手に動いてボールがとんでもない方へ転がっていく」。
自分の選手人生は終わったと思った。ツアー1勝の貯金も尽きた。転戦が単なる浪費の旅になったとき、1年きっぱりゴルフをやめた。今後の人生を模索して、人脈を増やしていく中でふとした出会いの中からイップス克服の極意を掴んだのは、つい最近だ。
ツアーで初優勝を飾ったときは、自分一人で頑張ってきたような気さえした。「金銭感覚もなくなって、自分が違うステージに上がったような錯覚に陥ったりもした」。人の痛みや優しさを知ったのは、谷底で懸命にもがいている時だった。「人とのご縁のありがたみ。ゴルフを休んでいる間に出会った何千人という人々」。谷底でこそ、自分はより多くの宝物を得てきたと胸を張って言える。
「だから、みんなも嫌だな〜とか、つまんないな〜とか、お父さんやお母さんにうるさいなあ・・・とか。思うことがあるかもしれないけれど。目の前で起きることはいつか、必ずすべて自分に返ってくるから。学校にいって、遊んで、夢を持って、目の前のことを一生懸命に続けていったら、必ず達成出来る。山も谷も乗り越えていったら、必ず夢は叶う。だから頑張ってください。分かったかな?」。
子どもたちの目が輝いた。
※公益財団法人ジュニアゴルファー育成財団の助成金により今回のスナッグゴルフコーチングセットが寄贈並びに導入されました。
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