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THE SINGHA CORPORATION THAILAND OPEN 2015
竹谷佳孝は初日圏外からの予選通過に「拾って拾って、それが僕の生命線」
選手用にテーピングを携行していて、おかげで命拾いをしたが、ラウンド前からこんな調子で、「本当に暑くて・・・」。本格シーズンはこれからという、日本の選手たちには余計に堪える。
「気温と湿気で脳まで来る感じ。ぼーっとして・・・。集中出来ない。今日は最後の3ホールも脱水状態」。その中で、正気を保つのは至難のわざ。
「コンビニで買い込んできたスポーツ飲料を持って、日傘を差して」と、その日傘も実はこちらはそもそも日本に忘れてきてしまって、雨傘で代用している。「ないよりは助かっている」と午前中は降り注ぐ太陽にも雨傘を手放さず、懸命に意識をプレーに集中させる。
東南アジア特有の、くせの強い芝質。
「フックラインでありながら、スライス目というような」。ただでさえ朦朧とした意識の中で、逡巡し出すとらちがあかない。「今日は全部、まっすぐと決めて打った」。5つのバーディを奪った。前日の71位タイから、暫定の26位タイまで順位を上げてきた。
「拾って、拾って、昨日も今日もなんとか耐えてる。それが僕の生命線」としぶとく、タイの週末にも居残った。
「土日に何かあるのと、土日に何もないのとでは、大違い」。
ワンアジアツアーと共同主管の、いわゆるジャパンゴルフツアーのこの“アジアシリーズ”は、一昨年前からスタートしたが、竹谷は初出場を果たした昨年、インドネシアPGA選手権で予選落ちをしたから、アジアでの決勝ラウンド進出はこれが初の経験だ。
「去年の週末は、プールサイドでバカンスしていた」。飛行機は、代えのきかない最終日の日曜便で、予選落ちなら残り2日はどこかで時間をつぶすしかなくなる。
二の舞は嫌だった。「来たからには、4日間やる。そこで何かを得るというのがモチベーション」。今年はこのアジアシリーズも、シーズンの合間にスケジュールが組み込まれて、5年シードの竹谷もあえて出場を見合わせて、休養に充てても良かった。
「だけど遠くまで来れば、必ず学ぶものはある。それも僕のモチベーション」。
日本選手には馴染みのないバミューダ芝も、こちらの選手はみな、こともなげに球を上げ、グリーンにぴたりと止めてみせる。
「ああ、ああいう打ち方もあったんだ、と。見て、まねて、学ぶだけでも来た甲斐はある」。
タイで、引き出しを増やして帰る。
そのためにも、決勝進出は必須だった。
土日はホテルのプールサイドでトロピカルドリンクをオーダーするしかなかった昨年を、返上するためにも暑さにも、負けるわけにはいかなかった。「何が起きても、何か必ず得るものがある」。今回は、コースで過ごすことになったタイの週末に胸躍る。