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つるやオープンゴルフトーナメント 2013
松山英樹が最速のプロ初V【インタビュー動画】
16番では、8メートルを沈めた。
「前半は全然入っていなかったけど。このパットで自信が持てた。これで勝てる」。
ひそかに抱いた確信も、すぐに相手に入れ返された。
「オー選手も粘り強く入れてきて。この人は、どんだけパットを入れるんだ」と、そんな内心の動揺はひた隠しに、さらに17番では奥のカラーから打ち過ぎて、今度は手前カラーと渡り歩いた3メートルのバーディパットもグリーンの外からねじ込んだ。
そして、ついに土壇場で振り切った。最終18番。残り175ヤードの2打目は「先にプレッシャーをかけられた」と6番アイアンで、強烈な一撃だ。
今年のつるやオープンは、66歳が史上初のエージシュートを達成して華々しく幕を開いた20周年の記念大会。最後は21歳が締めた。ピンそばのバーディで、デビューから2戦目のプロ初Vは、99年のJGTO発足後としては最速記録の更新だ。
180センチの長身は、日に日に大きくなっていくようだ。今週は、朝のレストランでトースターが焼き上がるのを待ちながら、ビュッフェからおもむろに焼き海苔を取った。
パンに海苔・・・!? 「いえいえ、まさか!!」と、テーブルを指さして、「ご飯はもう、向こうに取ってあるんです」。専属トレーナーの金田相範さんによると、「彼はほんとうになんでもよく食う。ご飯なら、どんぶりに軽く3杯はおかわりをする」。和洋折衷の朝食からも察せられる旺盛な食欲と、ランニングにトレーニングと日々のたゆまぬ鍛錬で、鍛え上げられた体。
14番では、右の林に打ち込むピンチも目の前の木を避けて、フェードボールで花道に脱出。そこからパーを拾うなど、最後まで冷静な試合運びも、プレッシャーとは無縁に見える。
「見せないようにしてるんです」と、松山は言う。
「いや、そもそもプレッシャーなんて、彼にはない」とは、今季バッグを担ぐ進藤大典さん。「緊張しないように、あえてスコアボードを見ないで回る選手もいますが英樹はいつも“ガン見(超・凝視)”している」。むしろ、進んで自分にプレッシャーをかけようとしているようにも見えると進藤さんは言う。
「緊張感の中でやったほうが、良いパフォーマンスが出来ると自分で分かっているのでしょう」。
憎らしいほどの強心臓。それでも、ふと垣間見せた弱み。この日は前半に伸び悩んで進藤さんに言った。
「勝てなかったらどうしよう?」。初日にも、同じようなことを言った。この週はちょうどショットの不振も重なり、「去年夏の日本学生からずっと勝ってない。なんかもう、勝てるような気がしない」。
2011年の三井住友VISA太平洋マスターズで、史上3人目のアマチュアVを飾り、同年のマスターズで日本人選手として初のベストアマに輝いた。同学年の石川遼の一番のライバルとして、注目を浴び続けた。そして、今季はその石川が不在の中で、今月2日にプロ転向を表明した。
ジャンボが言う。「遼がいない分、彼が頑張ってくれないと、日本ツアーは面白くならない」。米ツアー参戦中の石川の留守を預かり、男子ツアーを背負って立つ存在として、周囲に見られていることは本人も承知している。この日も死闘を繰り広げながら考えた。「ここで勝てないと、ずっと言われる。そういう意味でも、勝てなかったらどうしようかと、そういう気持ちはありました」。
18番は、1.5メートルのウィニングパットも「外したらどうしよう、とか」。逡巡の中で打った。「外しても、プレーオフだとか。でも入れたい、とか。微妙な距離だったので、余計にドキドキしちゃって」。
そんな重圧も、はねのけた。圧巻のバーディで、ツアー2勝目を引き寄せた。表彰式で、ジャンボ尾崎に肩を抱かれて直立不動。「ナイスゲームだ」と声をかけられ感無量だ。
先週のデビュー戦「東建ホームメイトカップ」は最終日に盛り返して10位タイ。まだ2戦目ながら、開幕Vで今季4戦目の塚田好宣を抜いて、賞金ランクは1位に浮上。「開幕ダッシュをやれたらいい。その可能性もある選手だ」と、ジャンボ尾崎の太鼓判。
「偉大な方から認めていただけたのかなと、そういう気持ちは少しある。凄く嬉しい」。
でも超大型新人は、喜びに溺れはしない。「これだけじゃ、まだまだ。勝って来週、予選落ちではいただけない。調子に乗らないように頑張る」。女子ツアーは、東北福祉大の先輩の佐伯三貴さんが、2週連続優勝を飾る“アベックV”にも刺激を受けて、「先週はお先に、って言われたのに、また先に行かれた。追いつけるように頑張る」。
ルーキーが、2週連続Vなら史上初(※1973年のツアー制度施行後)。
次週の中日クラウンズは再び快挙をにらんで、さっそく翌日は月曜日の午後から和合をくまなく見て回る。