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2日目は5対5の同点で最終ラウンドに突入

韓国の慶南金海市にある正山(ジョンサン)カントリークラブで行われている日韓対抗戦「KBミリオンヤードカップ」。2日目のファボールは、どのマッチもハイスコアの戦いに、キャプテン・アオキも目を剥いた。
「今日はほんとにシーソーゲームだ!」。

そんな息詰まる大接戦の中で、まさに強引にポイントをもぎ取って帰ってきたのはこの3組だ。
近藤共弘&高山忠洋と藤田寛之&松村道央は引き分けの0.5ずつ。
そして、この日唯一の勝ち点1は、片山晋呉と池田勇太の最強コンビだ。

この日先陣を切った花の同級生ペアは、1打差で迎えた最終18番で魅せた。高山はティショットを右に大きく曲げて、グリーン方向に打つだけで精一杯の状況に、すべては近藤のプレーに託された。
ピン手前5メートルのバーディチャンスも、韓国の金大玹(キムデヒョン)にさらにその内側につけられた。

重圧のかかる場面。先に近藤がねじ込んだ。通算9アンダーは、引き分けに持ち込んで、「コンちゃん、カッコ良すぎ」と、思わず複雑な心境を吐露したのは高山だ。

というのも、序盤のゲームは高山が引っ張った。「でも、後半はコンちゃんがどんどん良くなって」。きっかけは16番で、高山がお裾分けした塩の塊。
この時期の韓国は、日本の梅雨と同じ気候で蒸し暑く、体力を消耗しがちだ。
「でも、あの塩を舐めた途端に、コンちゃんに良いスイッチが入った」。
あがり3ホールで怒濤の追い上げ。

「僕もそれまで頑張ったのに・・・」。最後は、ラフからラフへと渡り歩いた末のボギーに「あそこだけ見た人は、高山は今日は相当、悪かったんだ、と思うよね」。
「・・・まあ、まあ、まあ、まあ」と、近藤が同期の肩を叩いてなだめすかした。「今日の高山ちゃんは、絶好調だったよ」と取りなしつつ、「18番以外はね」と、言って舌をぺろりと「でも2人、すごく良いチームだったよね。明日は一人で戦わなくちゃいけないのは寂しい」と、そこは大いに意見が一致した。

藤田&松村組もやはり、1打ビハインドで迎えた18番で、一度は負けを覚悟した。松村が2メートルのパーパットを沈めた。神妙な面持ちで、相手のプレーを見ていた2人の表情が、複雑にゆがんだ。派手には喜べない。

「自力で勝ったんじゃないですから」。それでも、相手の金大玹(キムデヒョン)が1.5メートルのパーパットを2メートルもオーバーさせたとき、思わず2人でニンマリ顔を見合わせずにはいられなかった。

「韓国と、がっぷり四つの状況で、この0.5ポイントはデカイ」と藤田。「今日は最低限クリア出来て良かった」と初のチーム戦で、いまだ負けなしに、松村もホっと胸をなで下ろした。

そして土壇場でタイスコアに持ち込まれた片山と池田組は、やはり最終18番で渾身の一撃だ。打った瞬間、なにやら大声で叫びながら、横向きに駆け出した池田の第2打は、ピンそばのバーディチャンス。

片山も、ラフからのアプローチを見事ピンそばにつけた。このプレーに気圧された韓国チームは揃ってボギーを打った。劇的勝利にアウェイの18番グリーンは、沸きに沸いた。「よっ! ニッポンいち!」の掛け声に、池田が気持ち良さそうに手を振った。

昨年は負けなしの「最強コンビ」と言われながら、初の黒星を喫したのは前日初日。ホールアウトするなり、キャプテン・アオキに呼ばれた。
「明日はお前たちと、薗田と遼を入れ変えようと思う」。
負けた2組をシャッフルする。青木の苦渋の宣告に、片山も池田も絶句した。しばらく逡巡したのちに、池田が言った。
「このままでは悔しいです」。
片山も頭を下げた。「もう一度、この2人でやらしてください」。
そういう意味でも2人にとって、この日のフォアボールは絶対に負けられない1戦だった。

最後は、池田が魅せたかっこうだが、「途中までは俺が晋呉さんにおんぶに抱っこ。晋呉さんのパットはすごかった。構えたら入るというオーラが出ていた」と過去5度の賞金王に、尊敬のまなざしだ。
いつもはやんちゃな若大将も、年長者をいたわる。背筋痛がいぜんとして思わしくない片山は、アップダウンのきついコースに長尺パターを杖にして坂道をのぼる。池田は、その腰を後ろから支えてやりながら歩く。「これならちょっとは楽でしょ?」と顔をのぞきこみながら。
38歳と25歳が支え合い、励まし合ってもぎとった、渾身の勝ち点1こそ、前日初日の「リベンジ」だった。

翌3日(日)の最終日は「5対5で迎えるシングルス戦。完全なガチンコ勝負だ。心して行こう」と、青木。それに応えて強豪Y・E・ヤンとの最終マッチを任された片山は「明日は勝つだけ」と、力強く言い切った。

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