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「賞金王の次に光栄なこと!」優作の2015年
今年最後の晴れ舞台で、誰よりもスポットライトを浴びた金庚泰 (キムキョンテ)のかたわらで、静かに喜びを噛みしめていたのが優作だ。
賞金ランキングは自己最高の2位、獲得賞金は初の1億円超えでも、今年は庚泰 (キョンテ)の独壇場を許したのは確かだが、それでも優作には名実ともに、この1年を精一杯にやり遂げたという充実感がこみ上げていた。
「賞金王の次に、光栄なことなんじゃないか」と、優作は言った。
優作にとって、自身初の受賞となった「Unisysポイントランキング賞」は、それくらいに価値のあることだった。
「Unisysポイントランキング賞」とは、「平均パット」や「パーキープ率」をはじめとした8つの部門に「平均ストローク」を加えた計9部門の順位をすべてポイント換算して、その合計により1位者を決定する。いわば総合的に優れた選手を選出するために設定されたまさに栄えある賞は、しかし優作には「今までは、出場試合数が少ない選手が1位になる傾向がある」という印象が、ぬぐえなかったという。
「試合に出れば出るほど、ポイントが下がってしまうというか・・・出場10数試合の選手でも獲れる場合があった」。それだけに、今年は堂々、全試合出場を果たした我こそが、受賞に輝いたことにも感慨深いものがあった。
まさに年間を通じて、高い水準を維持し続けられた。「技術、メンタル、体力。すべてが問われる賞の受賞はプロの中のプロという感じ。そういう意味でも今年、全試合に出て、この賞を獲れたことは本当に自信になる」。
そして、まさにその集大成こそが、11月のダンロップフェニックスでのツアー通算3勝目だったと優作は実感している。会場のフェニックスカントリークラブ(宮崎県)は、これまた「総合力が問われるコース」(優作)である。
「勝利は時の運もあるが、あのコースはまぐれだけでは勝てない。あの週は自分のそのときのゴルフの調子も、アンラッキーさえも、すべて受け止めて戦うことが出来た。自分の良いところをすべて出せたと思う」。
松山英樹ら、後に続く後輩たちの大きな壁になれたことも嬉しかった。
「あの優勝も、今年の総合力があったからこそだと思っている」。鳴り物入りのプロ入りから11年の時を経て、2013年のゴルフ日本シリーズJTカップでやっと初Vの“遅れてきたヒーロー”が、いま充実の円熟期を迎えている。
そんな優作には、もうひとつ嬉しい受賞もあった。
プロなら誰もが憧れる「トータルドライビング賞」である。こちらはいわば、飛んで曲がらない男の“象徴”は、「Unisysポイントランキング賞」と合わせて“総合力”のW受賞が、優作の喜びを倍にする。
「自分の中で、成長できたな、と思える部分」。
そしてある確信に、いつも慎重に言葉を選ぶ男が珍しく言った。
「今年の総合力の高さを持ってすれば、賞金王も近づいてくる」と。
「そろそろ自分が目指しても、いいところではないか、と・・・」。
圧巻の年間5勝をあげた庚泰 (キョンテ)に比べて、終盤にやっと今季1勝にこぎつけたことには反省もある。まだまだ課題は山積みだし、今年は年の最後に初の戴冠も視野に入れたとはいっても、そもそも目先の結果に甘んじるような選手ではない。
「今回の受賞に甘んじることなく、またこれからも、やるべきことを見失うことなく、ますます総合力に磨きをかけていけるように努力する」と誓った。
「今回の受賞は僕だけの力だけではない。素晴らしいクラブや、ボールを提供してくださったメーカーのみなさん。その方々と一緒に獲れた賞でもあり、支えてくださったみなさんにも心からお礼を申し上げたい」と、律儀な男は恩人への感謝もけっして忘れないのだ。
※「Unisysポイントランキング賞」を受賞した宮里優作には、12月7日に行われたジャパンゴルフツアー表彰式で、一般社団法人日本ゴルフツアー機構から記念のトロフィーと、日本ユニシス株式会社の黒川茂・代表取締役社長より賞金100万円と、副賞として「東京ディズニーランド・ニューイーヤーズ・イヴ・パスポート」が贈られました。
また、トータルドライビング賞には同様にトロフィーと、森ビル株式会社の辻慎吾・代表取締役社長より賞金30万円が贈られました。