記事

藤田寛之は「開幕戦はいつも頭が真っ白」

26日の日曜日はジャパンゴルフフェアの最終日。横浜・みなとみらいの「パシフィコ横浜」に来る前に、ベテランはひとつ嬉しいニュースを噛みしめてきた。

世界ゴルフ選手権の「デルマッチプレー」で、谷原秀人がまた勝った。4強入りなら、谷原の世界ランクトップ50は確実と言われており、もう再来週にも控えたマスターズに辛くも間に合いそうだ。

谷原が10年ぶり2度目の切符を濃厚にした。そのことを、まるで自分のことのように喜んだ藤田。
「自分には厳しく、人には優しく。これぞプロというプロ。大好きなんです、谷原が」と熱く言ってしまってから、慌てて赤面。
「いや、そういう好きじゃなくて」と、モゴモゴと、“別の疑惑(?!)”を否定しながら、今も新鮮に思い起こされるのは自身の記憶。

オーガスタの初舞台は、4年前。あのときの経験は、まさに何ものにも変えたがたい財産だ。
せっかく大金をかけて海を渡り、しかしまったく歯が立たずに、「何しに行ったんだ・・・」。打ちのめされて帰ってもそれはそれで、計り知れないくらいの価値がある。
「若い子たちも、もっと外向きに、そういう思いをして欲しい。行ってみないと分からない体験。肌で感じて来て欲しい」。

そんな説教も、初の賞金王に輝いたころ(2012年)にはかなり強い口調でしたものだが、近頃ではめっきり大人しくなった。
今はそれよりもどかしいのが自身のこと。今年48歳を迎えて「いや、大変なんですよ、体がね・・・。技術より、最近はこちらのほうが」と、つい愚痴も出る。
「あまり自信もなくなってきた」と、JGTOブースでのトークショーでも弱音がこぼれる場面もめっきり増えたが、3年後には、いよいよシニア入りを控えて奮い立つものもある。

「レギュラーに、出られるなら出続けたい。室田さんみたいに」。シニアと掛け持ちで、2015年には史上最年長のシード入りを果たしたレジェンドの名を挙げ、「シニアの人たちから見れば、僕らなんかまだまだ若い。まだ頑張っているのと言われるくらいになれたら」。
老け込むにはまだ早い。

通算18勝。永久シードの25勝まで、あと7勝だが、年間3勝を飾った2014年から、丸2年も勝ち星が止まったままの今は、「ひとつでも勝てるように頑張りたい」と言うのが精一杯だが、この日は午前中に、師匠と弟弟子と3人でCS放送のブースに座って気がついた。
「芹澤さんと、宮本くんと。3人の中でも僕が一番黒かった」。
まだシーズンも開けないのに、誰よりも真っ黒に日焼けした肌。
「ハワイから帰ってからも、ずっと外にいる。まだ日本は寒いけど、この時期は意外と日差しが強くて。トレーニング焼けです」。
年々、自由がきかなくなると、嘆く体に鞭打って、まだやれる、まだ勝てる!

トラックマンを使ったレッスン会の前に、ジュニアから受けた質問。
「どうしたら、ゴルフが上手になれますか」と聞かれて即答した。
「誰よりもゴルフを好きになって下さい」。藤田にとってはそれこそが、上達の何よりの秘訣だ。

2週後に迫った国内開幕戦。シーズン初めの一発は、何年やっても緊張で震えてしまう。
「開幕戦は、たとえ賞金王でもどの選手でもゼロの状態。オフに何万球と球を打っても、開幕戦のスタートティは“あれ、どうやって、球を打つんだっけ?”と、僕はいつも頭が真っ白」。
何年やっても慣れるということがない。
プロ26年目の今年もやっぱり、新人のようなまっさらな心でコースに立つ。
初々しいまでのゴルフ愛に突き動かされて、今年も全力で走り抜くつもりだ。

関連記事