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ブリヂストンオープン 2016

小平智が“13打差”からの大逆転V4

本人も予想だにしていなかった大逆転Vだった。初日に首位発進した谷原とは実に13打差。91位タイは、4オーバーと出遅れ冷や汗をかいていた男が「予選も通過するかどうかという初日から、まさか優勝するとは思っていない」と、最終日に苦笑した。

2日目に66を出して、どうにか決勝ラウンドに進むと“裏街道”の3日目に、今度は62を出してあれよと優勝争いに食い込んだ。
首位と3打差の5位から出た最終日は強風下で、大混戦から抜け出した。
記録の残る85年以降としては、史上4番目となる大差逆転V(※)で「最後まで、諦めないのが大事」との優勝スピーチにも説得力を持たせた。

始まりこそドタバタでも、最後は勝つべくして勝ったという実感をにじませた。
「今日はスーパーショットや奇跡的な1打があったわけでもなく、実力で最終日を勝てた」。
リベンジに向けた研鑽と、努力に裏打ちされたV4だった。
海外志向の強い27歳の脳裏には、3年前の屈辱が常にあった。
このたび優勝賞金3000万円とともに受け取った。来年8月のWGCブリヂストン招待の出場権は、2013年の「日本ゴルフツアー選手権shishido Hills」で初優勝を飾った際にも得たV特典である。

2度目の挑戦を期して「今週は、それをすごく意識していた」。
会場のファイアストーンは、7400ヤードのモンスターコースで一度もアンダーパーを出せず、手も足も出ずに山積みの課題だけを持ち帰った。
「あのとき打ちのめされた記憶を払拭したい」。
再挑戦の時に備えて、磨きに磨きをかけてきた。
「向こうの選手は飛距離はもちろん、ロングアイアンの精度の高さと、小技のバリエーション。僕にはないもの」。
ギャップを埋めるために練習に練習を重ねた。
欧米の難コースにいつでも対応できるようにと今年7月にはロフト58度から、60度のウェッジに持ち替えた。
この日、最難関の14番こそリベンジに向けた布石だった。
12番からの連続バーディで、単独首位に踊り出た直後のこのパー4で、グリーン左手前のラフから20ヤードのアプローチを60度でピンにくっつけ、難なくパーを拾って「緊迫した場面で、あそこをすんなり抜けられたのは大きかった。成長できた部分」。

目下、部門別ランキング1位を走るトータルドライビングは飛んで曲がらないと定評のドライバーショットを誇示して昨年は、気の向くままに攻めた袖ケ浦で今年は攻略に徹した。
左ドッグレッグの16番パー5では、ティショットでより確実に5番ウッドを持ちながら、260ヤードの2打目で今度は果敢に3番ウッドを握り、6メートルのイーグルチャンスにするなど終始、頭を使ったマネジメントも光った。

常に冷静にリーダーボードから目を離さず、先に通算13アンダーにしたキョンフンを封じ、2打差で追う最終組のキョンテも寄せつけずに大逆転劇を完成させて、早くも来夏のリベンジに思いを馳せる。
「ファイヤーストーンで自分の実力が試せるという意味では、良い機会をもらえた。技術も上がっているし、あのときとは違うゴルフができると思う」。

今は欧州ツアーにも興味がある。世界の舞台を見据える視線の先には常にあの2人の存在がある。
「遼と英樹に追いつきたい」。
先週の日本オープンでは3日目に、松山との直接対決で「世界で戦っている選手はレベルがひとつ違う」と、連覇を阻まれ思い知った。
「英樹も遼も、アメリカから帰ってすぐにポンと勝つのも厳しい世界でやっているからこそ」。
改めて、胸に刻んだばかりの先週は、その翌週にも主戦場に舞い戻った2人は今週、互いに16-17年シーズンの初戦「CIMBクラシック」で優勝争いを繰り広げて、なおさら「負けられない」。
2学年下の2人にこれ以上、差を許すわけにはいかない。
「2人に追いつくためにも、日本で何回も勝てるようじゃないと通用しない。次の目標は、複数回優勝。今年はもう1勝、2勝としたい」。
本当に、最後まで諦めない心が試されるのはここから。

※過去の大逆転劇、最多差トップ5(85年以降の記録)
・最多差 伊澤利光(2001年ダイヤモンドカップ)初日8打差、116位からの優勝
・2番目 小林正則(2013年アジアパシフィック パナソニック)初日12打差、110位からの優勝
・3番目 黄重坤(2011年ミズノオープン)初日8打差、94位からの優勝
★4番目 小平智(2016年ブリヂストンオープン)初日13打差、91位からの優勝
・5番目 重信秀人(1986年ダンロップ国際)初日10打差、84位からの優勝

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