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コカ・コーラ東海クラシック 2008

武藤俊憲「ここで勝ってこそホンモノ」

嬉しい伝言を受け取ったのは、前日2日目。ホールアウト後の練習場だ。丸山茂樹の専属キャディの杉澤伸章さんに言われた。

「丸さんが“武藤くんはこれからまだまだ強くなるよ”って・・・!」。
「ほんとですか」と、たちまち大きなドングリまなこが輝く。
「嬉しいなあ」としみじみとつぶやいた。

「後ろから見ててもいい?」とふいに声をかけられたのは、丸山が今季国内初戦を迎えた5月の三菱ダイヤモンドカップだ。
しばらくしてポツリと言った。
「武藤くんは、とてもいいドライバーショットを打つ」。

その後も、今季好調のゴルフで何度も優勝争いに絡む武藤に注目してくれていたようで、「武藤くんは毎朝、試合中もトレーニングも頑張ってるし本当に偉い・・・って、丸さんが感心してたよ」。
杉澤さんに重ねて言われ、「本当に嬉しいなあ」と、繰り返した。

柔らかな体から繰り出す豪快なショットには、以前から定評があった。
自慢の飛距離に今年は粘り強さが加わった。

新たに契約を結んだ小林宏平トレーナーは「まるで鬼」。
ヒマさえあれば過酷なトレーニングメニューを武藤に強いる。
このオフ、所属コースの赤城カントリー倶楽部をラウンドした記憶はほとんどない。
「毎日毎日走ってました」。
コースで一番きつい傾斜を選び、何度もダッシュで駆け上る。
あまりのキツさに不安になって「こんなんで本当に大丈夫?」と何度、小林さんに聞いたことだろう。

そのたびに涼しい顔で、「大丈夫、あとほぐしてあげるから」と言うトレーナーに恨みを抱いたのも一度や二度ではない。
しかしおかげで4日間を通じて集中力を切らすことなく、戦い抜ける体が出来上がった。

トップ10入りは6回。
賞金ランクは現在12位。
今季絶好調の何よりの要因がここにある。

いよいよ迎える最終日、最終組で回るのは22歳の新人、池田勇太とツアー通算25勝を狙う片山晋呉だ。
さらに1打差の3位タイには賞金王・谷口徹。
2打差の5位には、やはり今季好調の矢野東が控える。

「明日は敵だらけで大変!」と悲鳴をあげつつ、「後輩にも、先輩にも、同級生にもガツンと言わせなきゃ!」と気合いが入る。
「誰が来ようが、僕がいいスコアで回ればいい」と、自信ものぞく。

ツアー初優勝は7打差の大逆転。「あのときは、勝ってしまったという感じ」というマンシングウェアオープンKSBカップは2005年。
3年前の出来事を忘れてしまっている人も多いのか、この日受けたインタビューではまだ未勝利の選手だと勘違いされてしまった。
「いえ、明日勝てば2回目です」と自らすかさず訂正を入れておいたがやっぱり悔しい。

それだけに、強豪ひしめく中で2つめの勝ち星をあげれば、印象づけられる。
「この中で勝ってこそホンモノですから」。
丸山から受けた太鼓判も、2勝目をあげてこそ生きてくる。

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