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三井住友VISA太平洋マスターズ 2019
勝負メシはドンキー、吉兆は監督。金谷拓実さんのゲン担ぎ
「一昨日に”びっくりドンキー”で”ダブルチーズバーグディッシュ”を食べたら7アンダーだったから、昨日もきゅうきょドンキーに行って同じものを」と、金谷さん。コース新の63をだした前日2日目の夕食を、2日続けてゲン担ぎ。
勝負服は、大学のチームカラーの黄色。前回、11年大会に、史上3人目のアマVを達成した松山英樹も身に着けた伝統だ。
最終日に駆け付けた、恩師の顔を見つけて「監督が来られたときは、いつもスコアが良い。アジアアマも来られてから良くなって優勝した」と、阿部靖彦・東北福祉大ゴルフ部監督のエビス顔は、吉兆に。
阿部監督には今朝、「ローアマはいらない。負けたら歩いて帰れ」と、言われた。
「プロであれ、アマであれ、試合に出たら優勝を目指す。優勝することだけを考えろ」と、きつく言われてコースに出た。
アマゴルファーをまとめる「日本ゴルフ協会(JGA)」の公式HPには、体重62キロとあったが「それは高校生の頃のままだと。詐称ですね。今は72キロくらい」。
今年4月のマスターズでフェアウェイキープ1位も、パワーには大いに物足りなさを感じて帰国。
筋トレにますます力を入れた。
「飛距離を伸ばしたい。動作の効率をよくするトレーニングと、食事の量も増やして。ここを回ってても去年よりは(ショットが)前に行くようになった」。
ナショナルチームのコーチの指導で、普段の練習は「ショートゲームに65%。アイアン、ドライバーが35%」。1ラウンド中にもっとも打つ割合が多い、40〜60ヤードの距離にいちばん時間を割くという。
それでも足りない部分は、気持ちで補う。
「飛距離が出るとか、アイアンが上手いとか、自分はそういうのはないけど負けん気とか、自分を貫くプレーとか、勝負に徹するところが自分の強み」。
初出場の御殿場で予選落ちを喫した昨年から、体も心も大きくなって、金谷さんは戻った。
「過去、何度も負けて、悔しい思いをしているが、そういうところから這い上がってきた。松山もそうだが、そういう経験が、強い気持ちを作る」と、阿部監督。
10月31日から2日をかけて行われた大学の対抗戦で、監督は初日に74のチームワーストを打った金谷さんを、2日目にメンバーから外した。
リスト落ちは入部以来、初めてのことだったという。
「3オーバー打っても使ってもらえるだろうというおごりが自分の中にあった」と、金谷さん。
だがたとえエースでも、チームに貢献できなければ容赦なく弾かれる現実。
「出ることは、当たり前じゃない。監督に外されたことで、そのことに気が付けた。すごく良い経験になった」。
翌日から練習の虫にますます拍車がかかった。
快挙を支えた同級生キャディの竹川雄喜さん。「拓実がゴルフのことを考えない時はない」。
21歳は、四六時中ゴルフ漬け。
「その積み重ねが、最後のイーグルパットにあらわれた」と、阿部監督。
優勝の自身へのご褒美は何か、と聞かれた金谷さんは、「このままずーっとゴルフをしていたい」と答えてウフフ、と笑った。