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今年、第3の男
韓国の鬼、金庚泰 (キムキョンテ)。
今季は開幕戦の「東建ホームメイトカップ」から始まり、中日クラウンズ、ミズノオープンと序盤に立て続けに3勝と、飛ばしに飛ばして、早々に2年連続3度目の賞金王を匂わせた。
谷原秀人の夏の2週連続Vに抜かれるまでトップを走り続けても、本人は「僕がずっと1位でいられるわけがない」と、冷静だった。
昨季の賞金王の資格で、海外のメジャーに出る機会が増えて、6月なかばから丸ひと月、日本ツアーを留守にした。
米ツアーでシード入りのチャンスが見え始めてからは、秋の入れ替え戦に挑戦すると決め、相変わらず行ったり来たりの生活が続いた。
「アメリカは、ずっと目標にしていること。日本の試合にももっと出たかったけど、チャンスがあると分かったから。やっぱりトライしてみたかった」。
残念ながら、3試合が済んだところでいったん韓国に帰国した際に、背中に痛みを感じて、今年も志半ばで諦めるしかなくなった。悔しさで、「テンションが下がった時期があった」としばらく息をひそめていた鬼が、再び本来の姿を現したのは、シーズンも終盤戦。
11月のブリヂストンオープンで3位につけて、再三賞金1位と2位を脅かした。池田は「谷原さんと、キョンテがいてくれたから、今年の自分の活躍があった」と振り返った。
2位に終わった谷原も、「最後まで、キョンテの強さを見せつけられた」と言った。
本人は「残り数試合となったときに、僕の賞金は8000万円ほど。やっぱり1億7000万円以上はいかないと、賞金王は難しい」と、どこまでも冷静に、「そこから倍以上稼がないといけないというのはやっぱり厳しいと思った。今年は、賞金王は無理でも最後まで頑張りたいとは思った」と、すでに池田と谷原に、賞金レースを託した「ゴルフ日本シリーズJTカップ」こそ鬼の怖さの真骨頂だった。
最終日の65で猛然と追いかけると東京よみうりは最後の18番で、本当にあともうひと転がりなら、先輩の朴相賢(パクサンヒョン)に追いついていた。
「カップの右エッジか、あるいはボール1個くらい」と読んだパーパット。「でも少しでも弱いと、左に外してしまう。左に外したら、3メートルは行ってしまうパット。やっぱりあの傾斜は凄いなと思いますね」と改めて、屈指のパー3におびえながらも、完璧に打ったボールはカップをのぞき見るような状態のまま、ほんのわずかのところで止まってしまった。
「なんとか入ってくれないもんかとしばらく待ったけど、ダメでしたね」と、いつもの静かな笑みで、タップインのボギーに終わった。
開幕戦に続いて最終戦、初めと終わりを完璧に締めるには、わずかに1打足りなかったが鬼は満足だ。
「賞金は3位だったけど、最後の試合で2位にはなれた。最終戦では、それまで4ヶ月も入らなかったパットが急に入ってくれたし、良い1年になったと思う」。
部門別ランキングでは、2年連続5度目のパーキープ率1位のほかにも主要5部門でトップ10入りと、鬼の安定感で走り抜けた2016年。
「今年はそんなに状態が良くない中でも頑張れたけどこのオフは、悪かったところを思い出しながら、またしっかり練習してきたい」。
2017年に向かってまた牙を研ぐ。
※パーキープ率1位に輝いた金庚泰 (キムキョンテ)のほか、パーオン率1位の川村昌弘、トータルドライビング1位の秋吉翔太には、一般社団法人日本ゴルフツアー機構より記念のトロフィが贈られました。