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RIZAP KBCオーガスタゴルフトーナメント 2019
地元福岡出身。藤田寛之が、亡き父を思う芥屋の夏
そして、藤田には例年と違った心境で迎える今大会となる。
中学生のころ、父親の寛実さんに連れられ福岡県東区香椎の実家から、地下鉄とギャラリーバスを乗り継いで初めて見たのがこのトーナメントだ。
92年のプロ入りから寛実さんが欠かさず観戦に来てくれたのもこの試合でもあった。
その父を、亡くしたのは今年の開幕直前。
「もう1回、会えるかなと思っていたんですけれど…」。
亡くなる1週間前に、地元の地区競技に合わせて帰省した際に見舞ったのが最期となった。
幼少期から、めったに褒めてくれることがなかった。
親子関係を聞かれるたびに、「オヤジに褒められたくて、ゴルフを頑張ってきた部分もある」とよく、苦笑いで話した。
その父が脳梗塞に倒れたのは、藤田が初の賞金王についた2012年だった。
その後は床に伏しがちになり、息子の観戦も難しくなった。
「だんだん歩くのも困難になり、会場にも来れなくなってからは、そんなオヤジを元気にしたくて自分も頑張ってきたところもある」。
特に、地元開催の今大会は親子の悲願で、やっと大願成就を果たした2014年は、通算17回目の勝利にして初の男泣き。
「勝って泣いたのは初めてです。オヤジのために、勝ちたかった。本当は目の前で見せたかった」と、自宅療養の父にやっと勝利を献上して、九州男児が号泣したのである。
その父も、もういない。
父親を失ってから、初めて迎える地元大会。
「…父親が生きていた時のほうが、頑張ろうという気持ちが強かったかもしれません」。
今年は6月の誕生日で、いよいよ50歳のシニア入りに突入。
「以前は10出来たことが7、6と減ったり、年相応の苦しみもある。あえてゴルフからちょっと離れてみようか、とか。そういうストレス発散も、必要になる年ごろ」と、年齢からくる心境の変化もあるが今は、そんな自分も含めて「”(父親は)観ていてくれるんだろうな”と。今はむしろそういう落ち着いた気持ちで(プレー)できる気もしています」。
初盆を済ませたばかりの今夏。
今年は地元で、心静かに弔い戦に挑む。