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池田勇太は総合力を総なめ
「今まではどこか偏っていたものが、総合的に整った年になったのかもしれない」。
その点では自己評価もできるが「反対に、総合力はついてもそれを生かし切れなかった1年だったともいえる」。
嬉しい受賞の陰でプラスとマイナス面が見え隠れ。「2つの相反する見方がある」と、W受賞に伴う葛藤が、本人には少なからずあるようだ。
トータルポイント賞は、平均パットやパーキープ率をはじめとした8つの部門別に、平均ストロークを加えた9つの部門別の順位すべてをポイント化して、その合計により順位を決定するもので今年、池田は123ポイントを獲得。
ショット、パット、アプローチにバンカーショットと、すべてにおいて、そつなくこなして総合力では誰よりもまさったことは間違いなくても今季は15年以来の年間1勝にとどまった。
飛距離アップの努力も怠らず、過酷なトレーニングに伴う体の変化に応じたスイング改造と構築も、コツコツと続けてきた。
「トレーニングをして振りやすくなった分、より最大限に力を生かせるようにスイングを変えてきた。自分には、もともと基本の形なんてないから。クラブ選びも自由に、そのときそのときで、一番合うものを常にチョイスすることでより楽に、飛んでかつ安定感も増してというスイングが、いまできていているのだとは思う」と、トータルドライビング(※)の初受賞もそのたまものだが、本人は満足していない。
今年も序盤は積極的に海外に足を向けてなお賞金ランク5位という結果にも、納得はしない。「1年間、常に優勝争いをやって、常に上位でというのは難しいかもしれない。それでも来年は、成績でも総合的によかったねと言える1年にしてみたい」と、さらに高みを見据える。
3期つとめた選手会長を、いったん退いてから丸3年が過ぎた。
「俺がやっていたときよりも、さらにゴルフ界をとりまく事情は厳しくなっているが、それでも遼はよく頑張ってくれた」と、若き新選手会長をねぎらった。
「俺のときもみなさんに非常に手伝ってもらったし、今度は自分がいつでも彼をサポートするという気持ちを持ちながらも、彼にはまた彼のやり方がある。遼のスピードというのもある。俺が出ていってどうのこうのというのは違うと思う」と、石川をつかず離れず見守りながらも、ここぞの行動力はやっぱり早かった。
9月。愛する北海道で、大地震が起きた。
主催者の迅速なご判断で、連覇がかかったANAオープンの開催中止は決まっても、すぐに石川と連絡を取り合い、前後週のバックアップ体制を整え、自分は昨年の覇者として、さっそく現地に入って特集番組に出演。不測の事態に備えてあえて都内にとどまった石川と、中継を結んで当地の現状を伝えた。
そして慌ただしく戻るなり、翌週の「アジアパシフィック ダイヤモンドカップ」で、史上3番目の若さでツアー通算20勝を達成。
「スポーツの力でいまできること」を、この上ない形で実践。図抜けた有言実行力を改めて示してみせた。
今月22日の誕生日で33歳。ますます若返りが進む男子ツアーで、際立つ中堅の存在感。
「この先のスケジュールはまだ分からない。やっぱり序盤は海外に行くのか、日本でやるのか。まだ来年のことは、わからないけど自分が育った日本でまた1年の集大成というものを、やってみたい気持ちはある」と来季、3年ぶりの賞金王獲りもひそかに視野に入れた。
「そのために、オフはトレーニングをして、練習もして、合宿とか、いつものようにやるのか変えていくのかそれもまだ、わからないけど我が人生にゴルフあり…!! 来季も思うがままに生きていきたいな」。
来季の池田も、風が向くまま気の向くまま。
※トータルドライビングディスタンス賞…ドライビングディスタンス賞と、フェアウェイキープ率賞の順位をポイント化して順位を算出。もっとも飛んで曲がらない称号を得た池田には、今月3日に都内で行われたジャパンゴルフツアー表彰式で、JGTO会長の青木功より記念のトロフィーと、またトータルポイントランキング賞には賞金として、株式会社レオパレス21の福島範仁・執行役員様より100万円と副賞として、バロン・フィリップ・ド・ロスシルド、オリエントのアニュレ・アリス ブランド・アンバサダー様より最高級ワインの「ムートンカデ・ルージュ・セレクション・ライダーカップ 2018」が贈られました。