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パナソニックオープン 2016
永野竜太郎が2週連続の首位発進
「今日は14番くらいから、吹いてきた」と、それまで5つのバーディも、強い風が吹き始めると、したたかに防御に転じた。
3Wで打った15番のティショットを右にふかした。「木の裏に行ってしまって狙えなかった」。手前30ヤードに刻んだが、「下は悪いし、バンカーもかかるし、デリケートなライン」。この日最大のピンチもツイていた。
3打目のアプローチは1バウンドして竿を直撃。ピンそばのパーパットで難を逃れた。
前半の6番でも、あわや左OB。命拾いをしたばかりか、「下がベアグラウンドだったので、球を低く抑えて打つにも問題なかった。パーで良いというところでバーディが来た」と、手前1メートルのチャンスも決めた。
3年ぶりに再開した今大会の復活の舞台となる千葉県の千葉カントリークラブ 梅郷コースは、学生時代に関東アマや、大学対抗戦で経験があるが当時は「そんなに良いスコアを出せた記憶がない。林間コースで、木も高く、幅の中でゴルフをしないといけない」。
難コースのイメージも、プロ9年目にして払拭できた。「先週よりは、ドライバーで飛ばせないけど、それでもここで思い切り振っていけたら自信になる」。今週は、6番、8番で計測中のドライビングディスタンスは永野がプレーした頃はアゲンストの風で、記録は伸びなかった(82位)が、怖がらずに振っていけた。
シード5年目の今季、目標に掲げたのは「常に優勝争いが出来るようなプレーをする。より多く上位で戦う」。その思いは国内開幕戦を迎えるなり、地元熊本がああいうことになって、いまいっそう強くなっている。
「オフはしばらく試合が空いたし、開幕するまでは不安もあった」。
そんな矢先に熊本を襲った大地震だ。
大変でないわけがないのに、いつも電話で気丈に答える母親。
それどころではないはずなのに、自分を応援してくれる故郷の友人、知人。
「自分は自分でしっかりしないと、と思える。自分にも、出来ることが何かある、と弱い自分が出て来そうな時でも堪えられる」と永野はいう。
「背負うというよりも、背中を押されている感じ。逆に勇気をもらっています」。そんな地元の人たちに、自分はいったい何ができるのか。
自分はたまたま、遠征に出ていて、大地震の混乱に巻き込まれずに済んでいるということに、引け目を感じてしまう時もある。
「熊本が大変なときに、自分はまだ何も出来ていない、と。無力感を痛感している」。そして、だからこその思いがある。
後半から関東にも雨の気配をはらんだ湿った風が吹き始めたときにも、故郷を思った。「熊本も今日はひどい雨だ、と」。余震が続く中で、どれほど心細い日を過ごしているか。
「心配ごとはたくさんあるけど、自分も頑張っていると届けることしか僕には出来ないから」。国内の開幕戦から2週続きで、初日に首位に立った選手は、史上初(データの残る85年以降)。今週もさっそく、ひとつ熊本に明るいニュースを届けることが出来た。