この日も何度、口にしたかわからない。
「熊本が、大好きなんです」。
愛する故郷が未曽有の災害に見舞われた日。
変わり果てたその姿に涙がこぼれた。
あれは、2016年の開幕戦。「東建ホームメイトカップ」の初日にやはり熊本出身で、幼馴なじみの永野竜太郎とともに、首位タイに立った奇しくもその夜。
大地震が故郷を襲った。
安否確認と情報収集に追われながら、翌日には選手会に会場での募金活動と、寄付金の捻出を懇願。
永野と一緒に率先して故郷の復興支援活動に、奔走した。
子どもたちの心のケアにとスナッグゴルフの導入を呼びかけ、オフのたびに、石川遼ら人気選手を連れて被災地に入った。
数々のイベントを通じて故郷を励まし続けてきた。
「熊本が、大好きなんです」と、何度言っても足りないし、何度貢献活動を繰り返しても、まだまだアトムには物足りない。
今もまだ、ときどき大きな余震のたびにふるえる人々…。
「熊本のために何かしたいんです」と重永亜斗夢は2月8日に熊本県庁を表敬訪問。
震災からちょうど2年の開幕戦で、ツアー初Vを飾ったのは昨年。
その際の優勝賞金の一部をもって、蒲島郁夫・県知事を訪ねた。
「なんとか、直接お渡ししたい」とデビュー当時から、サポートを受ける地元・医薬品関連会社「株式会社ジェネフィット・ジャパン」の代表取締役、坂本俊喜さんを今回も頼った。
まず社会人として、人はどうあるべきか。もうひとりの親父のように、いつも親身に叱ってくれる。アトムの申し出を喜び知事と面談のチャンスを作ってくださった坂本さん。呼びかけに、多忙なスケジュールもいとわず快く時間を割いてくださった蒲島知事にも、感謝の気持ちがあふれた。
「今日はこのような機会をいただいて、本当にありがとうございます!」。
蒲島知事の就任は、偶然にもアトムのプロ転向と同年の2008年だそうだ。
「10年と9か月。私もプロと同じ道を歩いて来ました」と、その点でも感慨深げに「ケガや病気や逆境を乗り越えて、昨年みごと優勝された重永プロ。熊本も同様に、いま逆境にありますが、被災地の方々に夢と希望を与えてくださった。諦めず、努力を続ける重永さんに心から敬意を表したい」と、蒲島知事。
「選手会の中心となって、いつも熊本に心を寄せていただき本当にありがとうございます」と直々に謝辞を受ければこの春、選手会の震災復興支援担当・理事に就任したアトムには、いっそうの心の励み。
命名の由来に耳を傾け「十万馬力ですね!」と、言ってくださった蒲島知事に、本家本元のイラスト入りのオウンネームボールをプレゼントしようとこの日、持参したダース箱を開けたらなぜか、中身はまだ刻印される前のまっさらなボールばかりで、この日の表敬訪問に同伴した和歌子夫人は大慌て。とんだ手違いに本人以上に動揺を隠せず「すみません、すみませんっ」と、旦那に代わって可憐に平謝りだ。
優勝記念に作ったイラスト入りのタオルをお渡しして、どうにか夫婦の窮地をしのいでくれた愛妻。
そんな家族が大好きで、故郷の熊本が大好きで、だから今年もアトムは頑張る。
「今年はさらに2勝、3勝できるように頑張っていきたいです」。
これからもラララ、力の限りに故郷に尽くす。