記事

本年度の新・五輪強化選手に選出!! 比嘉一貴のあるオフの1日に密着

比嘉が広げた荷物の中から、昨年の比嘉の初V時の記念ボールを見つけた後輩の金谷さん(左)「欲しい…サインください!」コーチ陣も集まってきてミニサイン会
五輪の強化選手に認定されると、さまざまな優遇を受けられる。強化拠点施設の無償利用もそのひとつで、比嘉は2月15日から滞在。宮崎県のフェニックス・シーガイア・リゾート内にあるフェニックスカントリークラブは男子ゴルフのダンロップフェニックスの開催地でもあり、シーズンを通して手入れの行き届いた最上級のメンテナンスはもちろん、広々とした練習場や先端設備を投入したトレーニングジムなど、恵まれた環境が自由に使用できる。

そればかりか併設ホテルの宿泊費や往復の交通費までも負担してもらえるという手厚さ。
比嘉は昨オフも、同コースでキャンプを張ったそうだが当時は、もちろんすべて自腹。「去年はかなりかかった記憶がありますが、今年は食事代くらい。恵まれています。本当にありがたい」と、恩恵に感謝。
この日は、いったん地元沖縄に帰ることにしていたからラウンドはせず、打撃練習にとどめたが、その合間にも専用ジムで汗を流したり、外国人コーチの指導を受けたり、フライト時刻のギリギリまで、施設内で濃密な時間を過ごした。

前日18日には東北福祉大の後輩の金谷拓実(かなやたくみ)さんら年下のトップアマと9ホールを回り、3アンダーで”優勝”。プロの威厳をしっかり示した。つい、3年ほど前までは自身もアマ日本代表の”ナショナルチーム”のメンバー。
「今回もメンバーの合宿日程を、あらかじめ知らせてもらって自分もそれに合わせて来させてもらった。プロになってから、一緒に練習できる機会はなかなかないけど、みな、こないだまで一緒にやっていた仲間なので。学生もコーチもみんな顔なじみだし僕のことをよく分かってくれている。居心地もいいし、得られるものも大きい」と、メリットを上げる。
2日前には、体中にセンサーを巻き付け、サイボーグのような姿でスイングの動作解析も受けた。普段、地元ではまず経験できない、最先端の機器を使っての特訓が、ここでは存分に受けられる。

今年の強化選手は、昨年に引き続いて松山英樹と今平周吾、小平智、星野陸也、時松隆光らに加えて石川遼と浅地洋佑、そして比嘉の3人が加わり、男子は計8名。来年の3月末までサポートが受けられる。
「上から世界ランキング順に選ばれるし、強化選手に入れたことは嬉しい。でもこれが、日本代表ならもっとよかった…」と、悔しがる。
「開催が東京と決まった時からオリンピックに出ることが、目標でした」と、比嘉は言う。

ツアーの出場権をかけた17年のQTサードで失格したり、紆余曲折はあったがプロ2年目の昨年、8月の「RIZAP KBCオーガスタ」でツアー初優勝。「勝てたことはよかった。でも、いい時が続かなかったり、連戦の体力など課題も多かった。やっぱり、昨年ですね。1年を通じて活躍することができなかった」と、2月16日更新の世界ランキング177位は、強化選手の中では日本勢7番手。
「もちろん、チャンスはゼロじゃない。開幕から全部優勝したとしたら分からない。分からないけど…」。
確かに、今から選出期限までの4か月あまりで代表権のある上位2枠に割り込むのは現実的ではない。
しかし、東京は無理としても、次のパリ(2024)、アメリカ(2028)と、夢を持続していくためにも2020年は大事な1年と心得る。
強化選手のうま味も活かして「今年はツアーで年間3勝を目指します。そして、12月の最終戦で賞金王もどうかという位置にいられれば来年のメジャーなど、チャンスが広がる。焦らずに頑張っていきたいです」。
もちろん、尊敬してやまない大学先輩の松山と、いずれ同じ舞台で戦うのが最大の目標には変わりない。

<比嘉一貴>
1995年4月23日生まれの24歳、沖縄県出身。本部高校時代から宮里藍さんらの父である優さんに師事し、顕著な成績を残す。東北福祉大時には16年の日本オープンローアマを獲得するなどトップアマとして、国内外で活躍。プロ宣言の17年11月に、QTサードで失格するなど躓きにもめげずに這い上がるとプロ2年目の昨年、ツアー初優勝。身長158センチは、史上もっとも小さなチャンピオンと言われた。
  • トレーニングルームで軽くウォームアップ後。学生時代みたいにセルフバッグで打席へ
  • ナショナルチームのカリスマコーチ、ガレス・ジョーンズ氏の手取り足取りの指導も受けられる。贅沢
  • @宮崎空港。今日19日でいったん撤収。沖縄に帰って師の宮里優氏の指導を受けたら次週はNZ→マレーシアで連戦。頑張ってきます!

関連記事