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ゴルフ日本シリーズJTカップ 2020
1日2イーグルも相方へのギフト。51歳の藤田寛之が2差5位T
6番は、10ヤードの第3打をピンに当てるチップイン。
17番では、192ヤードの2打目を50センチにくっつけた。
記録が残る限りでは、50歳以上がいっぺんに2つもイーグルを獲得するのは、大会史上初。
「滅多にないことが起きた」。
57回の歴史に、藤田がまた新たな伝説を刻んだ。
大会史上初の3連覇を達成し、賞金王に就いたのは2012年。
あの快挙から、7年。
見渡せば、コロナ禍の今年は、例年以上に20代の初出場者がひしめき「飛ぶ選手がゴロゴロいて、自分はいっぱいいっぱい」。
7年前の自分に勝ることといえば、「しわの数と疲労の抜けにくさ。ゴルフはさび付いているし、技術も落ちてきて、自信もない。ビビりながらやっている。終活じゃないけど、あと何回ここに出られるかとか、考えながらやっている」。
思い入れのある大会で、2日目に首位と2差の5位タイにつけた。
今度は日本タイトルの最年長V記録の期待がかかるが「そんな大それたことは、考えていない」。
ただ、ひたすらに頑張りたいのは無二の相方のため。
2014年6月の「日本ゴルフツアー選手権 森ビルカップShishido Hills」から6年半、連れ添ったプロキャディのピーター・ブルースさんが、今週限りで引退する。
「プライベートでも船に乗ったり、ゴルフをしたり。信頼があったし、こんなに相性の良い人はいない。人としても大好きだった」。
豪州に帰郷して、ゴルフ場で働くという。
「寂しいですけど、彼の人生だから」。
11月の「三井住友VISA太平洋マスターズ」の週末に告げられてから、この2020最終戦への出場が今季最大の目標になった。
「もう一試合増やすためにここには来たかった。ピーターと少しでもできたらな、と」。
賞金ランク28位でもぐりこみ、とうとうお別れの週に突入。
ピーターさんとの1日、1日がいっそう愛おしくなった。
「最後の練習日、最後の初日…今日はピーターと、最後の2日目が終わった。一つ一つが最後で、寂しさがある」。
透明のコロナシートを挟んで彼と食べるクラブハウスの朝食や、何気ない会話もかけがえがない。
14年の「アジアパシフィックオープン ダイヤモンドカップ」では、ピーターさんの46歳の誕生日を優勝で祝った思い出がある。
「最後も2人で、いい形で終わりたい。神様に祈ってます」。
選手がどんなに高ぶっても、お別れのカウントダウンが聞こえだしても、無二の相方は、一瞬でも足並みを乱すことがない。
見慣れた静かな微笑みも変わらない。
だから藤田はピーターさんが好きだ。