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ゴルフ日本シリーズJTカップ 2020
小斉平優和は2位陥落も。最終日こそ、締まっていこう!
3日目を、トップタイでスタートした小斉平優和(こさいひらゆうわ)は最終日を前に、首位を明け渡して無念の帰還。
朝からモヤのような小雨が降りやまなかった。気温が下がり、震える寒さ。手はかじかみ、体は凍った。
前半こそ、3つのバーディで首位を快走したが、「全然ドライバーが飛ばなくて、セカンドも厳しい距離が残った」。
過酷な条件に、後半はピンチが続いたが「ピンを狙わずに、広いほうへ。自分のプランどおりにゴルフを進められていた」。
14番で3メートルを沈めるバーディで、再び首位を取り返すことができた。
だが、この日最後のチャンスホールで自ら課した禁を破った。
「作戦をミスった」と、悔やんだのは17番のパー5だ。
右ラフからの第2打。「グリーンに乗せに行ったのが木に当たり、バンカーに入った」。
そこからの3打目をトップして、今度は奥の崖へ打ち込んだ。
そこから第4打のアプローチはホームラン。
5オン2パットのダブルボギーに沈んだ。
「2打目は、花道でよかったのに…」。
無謀な攻めを、悔やみながら入った最後の難しい18番パー3では、ピンの左に乗せながら、3パット。
ボギーを叩いて2位に陥落した。
凍えた体を温める間も与えず、猛然と練習場に向かった。
もう誰もいなくなった打撃場で「悔しい…」とつぶやいた。
重苦しく冷たい空気を、明るい声が打ち破る。
様子を見に来てくれたのは、いつもアニキみたいに接してくれる10歳上の先輩。
同じ大阪出身で、所属事務所も契約先も2人一緒という中西直人は、最下位からのトップスタートで、もうとっくにプレーは終わっていたのに今夜も後輩を食事に誘おうと、上がるまで待っててくれた。
「ゆうわ……、悔しいんか。そうかあ、悔しいよな、誰でも叩いたら、悔しいよなあ」と、軽妙な関西弁につられて暗い顔をゆっくりあげた。
前夜も一緒に食事をして、焼き肉店の名物デザート”納豆アイス”を仲良くかき混ぜ、「粘りのゴルフをしてきます!」と、誓った。
首位では粘れなかったけど、1差の2位だ。
「大丈夫や。ゆうわの取柄はただひとつ。寝たら直る! そうやろ、ゆうわ。頑張れゆうわ」。
うんうん、と少し笑みが戻った。
「もう帰ろう」と、肩を並べて練習場を後にした。
クラブハウスに行きながら、先輩からもっと大事な忠告が。
「ゆうわ…もう1個ゆっとく。チャック、開いとるで」。
慌てて”社会の窓”を締めた22歳。
マスクの下ですっかり笑顔になった。
足取りも軽く、縮こまっていた背中も伸びた。
大会史上最年少Vを賭けた本当の戦いはこれから。
最終日こそ、締まっていこう。