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大槻智春プレゼンツ「お教えします!谷口さん」
いよいよ最終回は、大先輩からの熱烈オファーを受けて、大槻自身が答えます。
谷口徹からの質問は「どうしていつも、あんなに真っすぐ遠くに飛ばせるの? 教えて、大槻くん………!」。
回答の中に、大槻がプロ8年目の初優勝を達成した昨年大会への思いや、ドラマも垣間見えてきます。
「合宿やラウンドのたびに谷口さんから聞かれることなのですが、谷口さんほどの選手から質問を受けることは、光栄だし本当に嬉しいことです。
でも、いつもその答えを濁してしまうのは、谷口さんはすでに結果を出されてきた人ですし、まだ1勝の僕なんかが教える立場か、という躊躇があるからです。
どの目線で応えればいいのか? 僕がショット時に実践していることはあまりにも基本的なことばかりで、谷口さんが本当に欲している答えなのか。それでいつも答えに困ってしまうのですが、こういう機会だからこそお伝えできることも、あるかもしれない。今回は僕なりの目線で、お話してみようと思います。
僕も、プロ転向(2011年)してしばらくしたころ、1ラウンドで必ず1回はOBを打つなど、ドライバーでめちゃくちゃ悩んだ時期があります。
アマ時代から完璧主義者。以前から『絶対にあそこに打つ』と、一点しか見られないところがあり、ポイントを少しでも外すと自分が許せない。プロになり、賞金を稼ぐ立場になったことで、元々の考え方が、余計に自分を窮屈にしたようです。
まず、その考えを改めることから始めました。たとえば左OB、右に池というロケーションなら真ん中しかダメ、ではなく、リスクの少ない右側を大きく、広く使って打っていく。許せる範囲を広げた。打つ際の気持ちや心構えを変えたのです。
すると、ゴルフが急変。17年にチャレンジツアー(現AbemaTVツアー)の賞金王を獲ることができました。
また、技術面でいうなら僕の場合はまず、打ち球をはっきり決める。
飛ばしに行くときは力が入りがちで、そういう時に僕は球がふける傾向があります。自分のミスを想定して、極力スピン量を減らして打つと決め、できるだけランを稼ぐことに徹する。
それと、普段から意識しているのはアドレスでアライメントをまっすぐとること。調子が悪くなってくると、僕は右肩が閉じやすくミスが出る。自分の癖を把握し、打つ前に肩のラインをまっすぐ意識するなど、打つ前に注意するポイントを必ず決めて、あとはどれだけしっかりと振り切れるか。
でも……どうですかね。多分、どれも谷口さんが求めている答えとは違う気がします。どう言ったら谷口さんの疑問に答えられるのか。谷口さんにはいつも本当にお世話になっているのに、こんなときでも何もお返しできずにすみませんm(__)m
谷口さんの宮崎合宿に初めて加えていただいたのは、昨年のオフからです。アプローチの打ち方やパットなど、学ぶところばかりでした。それと、勝負への熱い思い。谷口さんはプライベートのラウンドでも真剣勝負。お前らには絶対に負けないという気持ちを全面に出してこられます。
普段のラウンドから、見ているだけでその気迫が伝わってくるのです。
昨年のシード権争いの最終戦で、賞金シード落ちをした際に谷口さんが報道陣の前で泣いてしまったことは、僕ら選手の間でも話題になりました。
賞金シードは失ったけど、谷口さんには18年に、大会最年長優勝で20勝目を飾った「日本プロ」の際に得た5年シードがまだある。
出場権があるのに泣く意味が分からないと首を傾げた人もいました。
でも、それこそが谷口さんの強さの秘密だと僕は思っています。
気持ちはあってもあそこまで、感情を出してやれる人はなかなかいない。50歳を超えても本気で泣ける。僕にはそういう谷口さんこそ、凄くかっこよく思える。
僕らが谷口さんから学ぶべきことはまだまだたくさんありますが、そんな僕らにさえこうして『教えて』と、言って若い人間からまだ何かを吸収しようとする姿勢も本当にすごい。
昨年、僕が『関西オープン』で初優勝できたのは、そんな谷口さんを一番そばで見せてもらってきたおかげだと、今も本当に感謝しています。
ありがたいことに、谷口さんが僕のドライバーの精度を認めてくださっていることは、すごく感じますが『勝負なら、俺はまだまだ智春には負けへんで』と、よく言われます。
僕も本当にそう思います。
1勝で満足している場合ではない。谷口さんに圧勝できるくらいまで成長できても、まだ足りない。
真に強い選手になれるよう、僕も頑張っていきたいと思います。
今年の『関西オープン』は、残念ながら延期となりましたが、来年こそ連覇を目指し、できれば今度は谷口さんとの直接対決で勝ちたいです。谷口さん、その時こそ僕の真剣勝負、受けてくれますか?」(大槻智春)
【大槻くんへ】
「大槻くんは、球を打つのは上手いですが、まだ強くはない。上手いのと、勝てるのとは別物で、まだ僕も、彼にはこてんぱんにはやっつけられない。年に3回、4回勝とうと思ったら、普段から僕なんか常に負かさないと。大槻くんは昨年の『関西オープン』で勝ちましたが1勝の選手は星の数ほどいる。
30歳なんて、僕から言わしたらまだまだこれから。上手くて、本当に強い選手になってください。
時代の流れに負けて今年、僕がついにスマホに変えた時、大槻くんがラインの“徹スタンプ”をプレゼントしてくれました。嬉しかったけど、中身の文字がちっさくて見えにくいんです。そこは、ちょっと困っているけど活用させてもらってますよ!」(谷口より)
※大槻智春が今度こそ連覇を狙う。日本でもっとも古いオープン競技「関西オープン」の第86回大会は来年、改めて兵庫県神戸市の有馬ロイヤルゴルフクラブで行います。
関西のゴルフファンのみなさま。来年こそぜひ会場でお会いしましょう。